東京湾で今年七月、パナマ船籍の大型タンカー「ダイヤモンド・グレース」(一四七、〇一二トン)が浅瀬に底触、原油が流出した事故の第八回海難審判が二十五日、横浜地方海難審判庁(川村和夫審判長)で開かれ、川村審判長は、刑事訴訟の被告にあたる受審人の潮征治水先案内人(五七)に対して一か月の業務停止処分の裁決(判決)を言い渡した。指定海難関係人の常松秀則船長(五五)に対しては、過失責任を認めなかった。
川村審判長は、潮水先案内人が「東京湾中ノ瀬の浅瀬から離れる針路を選ぶ注意義務があるのに、何とかかわして北上できるものと思い、適切な針路を選ばなかった」などと指摘。
指定海難関係人の常松船長に対しては「針路が浅瀬付近に向かっている状況を認めながら、浅瀬から離れるように潮水先人に要請しなかったことは事故の原因」と言及したが、「勧告するまでもない」とした。
川村審判長は、超過密の東京湾の航行環境にも触れ、<1>中ノ瀬付近を南下、北上する船舶交通を整理する明かりの付いたブイの設置<2>水先案内人訓練で中ノ瀬付近の状況を再現できる操船シュミレーターの導入<3>中ノ瀬航路の浚渫(しゅんせつ)と、戦時中に設置された砲台の撤去で湾内の混雑を緩和する――などの海難防止策の早期実施を国に求めた。
(12月25日14:13)
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