トニー・ザイラー(オーストリア)

コルティナダンペッツォ:男子回転、大回転、滑降金
 「黒い稲妻」。あまりのスピードに、こんなニックネームがついた。 しかし、今もなお、今世紀最強のアルピニストと言われるトニー・ザイラーは、戦後、世界中のスキーファンの注目を一身に集めた男というだけではなかった。 敗戦のショックから立ち直りつつあった母国・オーストリアの国民には勇気を与え、映画スターとしても活躍、 スキーの魅力を世界に伝えるのにも一役買った。

 コルティナダンペッツォのアルペン3種目のコースは、いずれも五輪史上最難関とも言われた。その難コースを、 「黒い稲妻」が、無人の荒野を行くようにただ一人で滑りぬける。2位との差は、大回転で6秒2、滑降で3秒5、 回転で日本初のメダリスト・猪谷千春に4秒。 圧倒的な力の差を見せ付けた、21歳の鮮烈な五輪デビューとなった。

 ハンサムなルックス、スポーツマンらしいさわやかな性格は、映画界からも目を付けられた。スキーをテーマにした「黒い稲妻」 「白銀は招くよ」など多くの映画に出演。俳優としても成功を収めた。

 親日家としても有名で、たびたび来日してスキーの腕前を気軽に披露。日本映画にも出演している。その圧倒的な強さ、 映画での活躍を通じて、世界にスキー人気を広めたという意味でも、スキー界にとって大変な功労者だった。


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