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Web搭載のファイルメーカーPro 4.0
基本部分に大きな変更なし

[Saturday, November 29, 1997 渡辺 玲=日経MAC]

昨秋の3.0リリースから1年あまりで,ファイルメーカーProが4.0にバージョンアップした。10月に米国で英語版が発売されてからわずか2カ月遅れという,クラリスとしては異例に早い日本語版のリリースだ。既報のとおり,4.0の売りは,ファイルメーカーProのデータベースをそのままWebブラウザーで見ることができるというWebサーバー機能。それ以外の機能はマイナーバージョンアップ程度で,ファイル形式も3.0と共通である。オフィスで「普通」に使うなら,新機能に魅力を感じるか否かがバージョンアップをするかの分かれ目になる。


率直なところ,Webサーバー機能の搭載以外の部分に関しては,大きな機能改良はない。Webサーバー機能については,日経MAC12月号(97年11月18日発行)の記事「徹底検証 Webサーバー内蔵データベース」で詳しく紹介したので,今回は割愛する。ポイントだけ言っておくと,ファイルメーカーProのデータベースをNetscape NavigatorなどのWebブラウザーで見たり,編集したりできるというものである。使いやすく作るにはかなりの手間が必要だが,その手間を惜しまなければ,ファイルメーカーProのクライアントをWebブラウザーとすることで,オフィスのソフト投資をぐっと低減させることができる。

ファイル形式は3.0と共通
新機能を使わなければ混在が可能

ファイルメーカーProのように,日々の業務に密着したアプリケーションがバージョンアップしたとき,最も気になるのがバージョン間でのファイルの互換性だ。まずここを押さえておくと,ファイルメーカーPro 4.0のファイル形式は3.0と共通である。だから,2.0から3.0にバージョンアップした時のように,オフィス全体で「せーの」でバージョンアップしなくてもよい。

ファイルメーカーPro 4.0で作ったファイルは3.0でもそのまま開けるし,その逆ももちろん可能だ。ただし,当然と言えば当然のことだが,新機能の分についてはダメである。例えば,ファイルメーカーPro 4.0で搭載された新しいスクリプトステップを使った場合,そのファイルを3.0で開くとそのステップは「不明」とみなされて動作しない。

また,ファイルメーカーProサーバは依然3.0が現行バージョンであり,ファイルメーカーPro 4.0で作ったファイルをファイルメーカーProサーバ 3.0で公開すれば,ファイルメーカーPro 3.0でも4.0でも両方から接続できる。4.0の新機能を使ったファイルの場合も,ファイルメーカーProサーバ 3.0に接続するファイルメーカーのバージョンが4.0であれば,問題なくその新機能が利用できる。

ポータル内のソートが可能に
ドロップするだけでExcelを取り込める

このように,ファイルメーカーPro 4.0は「ファイルメーカーPro 3.0+細かな改良+Webサーバー機能」であり,土台は変わっていない。Webサーバー機能を使わない一般のユーザーがバージョンアップするかどうかは,これから説明する「細かな改良」が必要かどうかによる。

まず第一に,ポータル内でのソートが可能になった。ポータルとは,3.0で装備された機能で,リレーション先の関連データを複数まとめて1レコード内に表示できるというもの。リレーションが「1対多」であるときに,「1」の方に「多」のデータをまとめて表示できるというものだ。

従来,このポータル内の表示順は,リレーション先のレコードの作成順に固定されていた。データを引っ張ってくる側で都合のいい順番には並ばなかったのだ。これが4.0では改善され,リレーション設定のダイアログで,ポータルでデータ引っ張ってくる時に何をキーにしてソートするかを指定できるようになった。

オフィス・ユーザーに便利な新機能としては,Excelのファイルの取込み機能がある。ExcelのファイルをファイルメーカーPro 4.0にドラッグ・アンド・ドロップすると,自動的にワークシートを取り込んでくれる。取り込みルールはシンプルなもので,ワークシートの1行を1レコードとして,セルの計算結果をテキストをとして取り込む。計算式や書式データは無視されるが,Excelを入力ツールとして使い,ドロップしてファイルメーカー形式に変換し,さらに加工して使う,という利用法が可能になる。

URLをワンボタンでオープン
メールもファイルメーカーから出せる

インターネットがらみのデータを管理,利用するための機能もいくつか追加された。例えば,フィールドにURLが入っていれば,そのURLを選択して「コントロール+クリック」して現れるプルダウン・メニューから,そのURLを開くことができる。例えば「http://www.nikkeimac.com/」を選択してこのメニューを選べば,Webブラウザーが自動的に起動してサイトに接続する。どのWebブラウザーが使われるかは,Mac OS 8などに付属する「インターネット設定(Internet Config)」の設定内容に依存する。

また,URLを開くためのスクリプトステップが追加されている。スクリプト機能でフィールドの値をURLとして開くように設定し,それをボタンに割り当てれば,マウスクリック1つで指定のWebサイトに接続することもできる。URLは,httpのほか,ftp,file,mailtoに対応する。

「メール送信」スクリプトステップもユニークな新機能だ。これは,スクリプト設定で指定したフィールド内のデータを使って,ファイルメーカーProからインターネット・メールを作成および送信できるという機能だ。クラリスではクラリスメールとEudora Proでの動作を確認している。Eudora Pro の最新版,3.1.1-Jで試したが,問題なく動作した。スクリプトでメールを自動作成した後,送信を手動で行うか,または送信まで一気に自動で行うかは,オプションで選べる。

このほか,インターネット関係の新機能としては,Webサイトで使われるGIFやJPEGのデータをオブジェクト・フィールドに取り込む機能や,データベース・ファイルの内容を<TABLE>タグを使った表形式のHTMLファイルに書き出す機能が加わっている。

AppleScriptで自分を操作できる
Webのログ機能は改善してほしい

ネットワークでの共有にも改善点がある。これまで,マルチユーザの設定にしてファイルを共有している場合,誰かが接続しているかどうかが分かりづらかった。4.0では,何人のユーザーが接続しているのかを「共有設定」ダイアログで知ることができ,そこから接続中のユーザーにメッセージを送ることができる。このメッセージは,3.0のユーザーにも出せる。

また,3.0でスクリプト・ステップとしてAppleScriptの実行が可能になったが,ファイルメーカーPro自身をAppleScriptで操作することができなかった。ここも改善され,「自分で自分を」AppleScriptで操作できるようになった。これによって,複数のアプリケーションを連係させた処理をファイルメーカーProのボタンに仕込んでおくことができる。

最後に,今回説明を割愛したWebサーバー機能に関して要望を1点。Webサーバー機能ではログが取れるのだが,そのログが独自形式なうえ,どのデータが検索されたのかを知ることができない。これではWebサーバーとして公開した際のアクセス統計が不可能である。ぜひとも業界標準のWebSTAR形式か,CLF形式(Common Log Format)のログをサポートしてほしい。

【製品データ】
製品名:ファイルメーカーPro 4.0
開発:米Claris社
問い合わせ:クラリス,ファクス・サービス(03)3391-1200(メニュー#11003,アップグレード情報#11006)
価格:3万9000円(アップグレード:1万2000円)注)
発売:1997年12月

注)くやしいことにWindows 95/NT版のみ,1998年4月末までキャンペーン価格1万8000円で販売される。またキャンペーン期間中,マック版とWindows 95/NT版を同梱したハイブリッド版は4万9000円である。

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This page was last updated on Wed, Apr 15, 1998 at 8:44:16 PM.
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