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Windows 98,宇宙へ向けて発射
掛け値なしの堅ろうさをアピール?

[Tuesday, June 30, 1998]

Windows 98が米国で出荷された。パソコン・ショップの目玉商品には違いないが,95の時ほどの熱狂はない。Apple Computer社も特に販売インセンティブを設けたカウンター・キャンペーンを張るでもなく,おとなしい。そんな中,ちょっと変わったWindows 98記念イベントがAppleのお膝下で開かれた。

米国時間98年6月28日,「Launch Win98」なるイベントがCalifornia州,Cupartino市のDe Anza Junior Collageで開催された。米Apple Computerの本社とは目と鼻の先だ。会場にはざっと100人弱の老若男女が集まった。

あれ? Windows 98の出荷イベントは,6月25日ではなかったか,とお思いの方もいらっしゃるだろう。それは正しい。だが,イベント名に注意していただきたい。「Win98 Launch」ではない。「Launch Win98」である。

Launchという言葉にはそもそも「ロケットを打ち上げる」という意味がある。そう,このイベントは,Windows 98出荷を機に企画された「Windows 98なんてどっかに飛んでいってしまえ」というMicrosoftおちょくりイベントなのだ。文字通り,ロケットでWindows 98のCD-ROMを飛ばしてしまうのである。

Linuxのシェアはマックを越えている?

このイベントを企画したのは,Silicon Valley Linux User Group(SVLUG)というシリコン・バレーのLinuxユーザーの団体。Linuxといえば,Windowsオルタナティブとして,今,もっとも元気のいいOSである。一部には,マックのシェアを越えている,との噂もあるが,「この近辺(シリコン・バレー)ではマックのシェアを確実に越えているとは思うが,フリーウエアだから正確なシェアはわからない」(SVLUGのコア・メンバーであり,Linuxプリ・インストール・ハードウエアを開発,販売する米VA Research社,PresidentのLarry M.Augustin氏)。

そう,LinuxはフリーUNIXなのである。フリーUNIXといえば,まずIntel系のプラットフォームを思い浮かべる方も多いかもしれない。とんでもない。マック・ユーザーだから関係ないとは言わせない。http://www.mklinux.apple.com/をご覧頂きたい。本家Apple ComputerもMkLinuxと呼ぶPower Macを主たる稼働プラットフォームとしたLinuxの開発者コミュニティーをしっかり支援しているのだ(注:最近,Mac OS X計画に伴い,MkLinuxの開発中止がささやかれている)。

堅牢さを証明したWin98 CD

(10k) ロケットの設計者は,SVLUGのメンバーであり,本職はフリーのWebクリエーターであるSan Jose在住のIan Kluft氏(写真1)。

The San Francisco Bay Area National Association of Rocketry (BayNar)のクラブ・メンバーでもある。BayNarは毎週,De Anza Junior Collegeのパーキングで自作ロケットの打ち上げ集会を開催している。今回のLaunch Win98はこれにあわせて企画したジョークなのだ。

(11k) 開発したロケットは,教材用に市販されている米Estes Industries社のエンジンを搭載したもの。ロケットのフィンに採用したのが,Windows 98のBeta版CD-ROMだ(写真2)。ロケットのボディ・チューブは,18インチ(約46cm),このボディ・チューブ(機体)にLAUNCH 98のロゴをあしらっている。6インチ(約16cm)のノーズ・コーン(先端部)を取り付け,ボディ内には,落下時に使用するパラシュートを実装している。

第1回目の打ち上げに利用したエンジンは,「B6-4」と呼ぶ型番の製品で,高度250フィート(約76m)までの打ち上げが可能。B6-4の4の部分は,ノーズ・コーン切り離しまでの遅延時間。このノーズ・コーンが切り離されることで,中のパラシュートが飛び出し,落下する,という仕組みである。

ノーズ・コーンとボディ・チューブは,分離はするが,ヒモでつながれた状態でパラシュートに揺られて落下してくるため,再利用が可能。そのため,本日の「LAUNCH 98」ロケットは,「Win98」フィンが粉砕するまで,続けられる予定だ。何でも,氏は上空で爆発するものを作りたかったそうだが,法律的な規制で断念したらしい。

(11k) まず第1回目の打ち上げである。会場の注目集まる。期待に反して(?)無事成功(写真3)。Win98 CD-ROMを取り付けたロケットがパラシュートに揺られ降下してくる。

(11k)落下後のロケットをKluft氏が披露したが,CD-ROMの先が欠けた程度でなかなか堅牢である(写真4)。ただし「この部分は小さな損傷でも空力に大きく影響する。無視できない」(Kluft氏)そうだ。

第2回目の打ち上げは先のエンジンよりパワーのある「C6-3」を利用。C6-3は,氏によると,594フィート(約180m)程度の高度まで打ち上げ可能な「C6-5」と同程度のパワーがあるそうだ。ただしノーズ・コーン切り離しまでの時間が3秒であるため,高度はあまり期待できない。2回目の打ち上げも無事成功。美しい弧を描いて,西海岸の青空を「LAUNCH 98」号が舞っていく。

再び落下してきたロケットには,無事Win98フィンが残っている。Win98 CD-ROM,かなり堅牢である。第2回目の打ち上げでは,Win98とは関係ないエンジンを実装する部分に若干のトラブルが発生した模様だ。恐るべし,Win98。

(10k)なお,このイベントでは別の人物の設計による「Internet Explorer 98」号も打ち上げられたが,こちらは発射直後,バラバラになってしまった(写真5)。

Linuxユーザーは元気がいい

(11k) このイベントは,気合の入った単なるジョークであり,反Microsoftなどといった雰囲気はさらさらない。会場にはざっと50人程度が集まっていたが,多くはロケットを打ち上げに来たBayNarのメンバーとその家族であった(写真6)。

打ち上げ前に行われた「プレス・カンファレンス」(Kluft氏がそう呼んでいただけ。単に集まっていた人の前でロケットの説明を実施した)では,嘘とも冗談とも付かない質疑応答が交わされた。

Q:Windows 98はこの打ち上げで,宇宙に飛び立つことになってしまうね
A:すでにLinuxは,火星の探査の際に利用された実績がある
Q:打ち上げの結果,Windows 98がクラッシュする可能性が高いが
A:公式の場でクラッシュを披露するのは2回目になるね

といった具合である。

それにしても,今回のWindows 98発表関連のニュースでは,Linuxユーザー・グループの元気の良さが目立つ。今のLinuxユーザーは勢いがある。数年前なら,このようなジョーク・イベントはマック・ユーザーの手でも行われたはず。マック・ユーザーにはもっと元気を出してもらいたい。

(大谷 晃司=日経オープンシステム)

●図1 自作の「LAUNCH 98」号を手にする設計者のIan Kluft氏(右)
●図2 LAUNCH 98のフィンにはWindows 98 CD-ROMが採用された。ロケットの姿勢を安定させる重要な空力部品である
●図3 1回目の打ち上げの瞬間
●図4 1回目の打ち上げに耐えたWindows 98 CD-ROM。下の部分がやや欠けている
●図5 バラバラになってしまった「Internet Explorer 98」
●図6 打ち上げを見守る人々

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