SeyboldでBill Gate氏が初の基調講演 Windows NT 5.0でパブリッシングに注力
[Tuesday, October 7, 1997 シリコンバレー・オフィス発、山田 剛良=日経MAC]
97年9月29日から米San Francisco市でディジタル・パブリッシング関連のセミナー・展示会「Seybold San Francisco 97」が開催された。展示会の初日,10月1日(9月30日まではセミナーのみ),Microsoft社の会長兼CEO(最高経営責任者),Bill Gates氏が基調講演の壇上に立ち,パブリッシングのマーケットへMicrosoftの存在を強くアピールした。
Gates氏の講演は,開幕前から人がいっぱい。開場は午前8時半だったが,すぐに満員になった。司会者が登場,「実はBill Gates氏がSeyboldでキーノートをするのは初めてなんだ。彼らは我々の業界にあまりかかわってくれなかったからね」と聴衆の笑いをとってから,「Please welcome, this is Bill Gates」と紹介した。聴衆の大多数はマックでパブリッシングを仕事にしている人々なのだが,全体的に歓迎ムード。その中でキーノートが始まった。
Gates氏はまず「テクノロジーの進歩は人々を『Web Life Style』へと導くだろう。Web Life Styleというのは,テレビのある生活とかクルマのある生活とかと同列の概念でインターネットが生活の一部となる,という意味だ。現在はまだ多数ではないが,10年後にはアメリカの大多数がWeb Life Styleを送っているはずだ。つまり,Webのすそ野はとてつもなく広いのだ」と切り出した。
Microsoft社はWeb Life Styleを送るユーザー側,コンテンツを制作するクリエーター,コンテンツを提供するパブリッシャーのすべてを支援するためにソフトウエアを作っていくと強調した。具体的にはWindows NTサーバーであり,「BackOffice」であり,「Office 97」であり,「Windows 98」とNTクライアントであり,「Internet Explorer 4.0」である。このようなソフトウエアの「BuildingBlock」を作って,ユーザーを支援すると語った。
また,米Adobe Systems社,Quark社,Macromedia社といったベンダーから対応ソフトの開発の約束を取り付けたとし,ページ・レイアウト・ソフトの「QuarkExpress for NT 5.0」の開発の約束については「今日(10月1日),(Quark社と)確認した」と明言した。
デモではNT 5.0上でPhotoshopを動作させ,マック版と同じインタフェースを強調
Gates氏のプレゼンテーションで注目されたのは,97年9月末からディベロッパーに対してβ版の配布を開始した「Windows NT 5.0」だ。
まず,
1) 独Heidelberg Prepress社(旧Linotype-Hell社)と共同開発した「Image Color Management 2.0」(ICM2)と呼ばれるカラー・マネジメント機能を内蔵している
2)TrueTypeとPostScript,OpenTypeの各フォントをネイティブでサポートしている
3)PostScript 3.0対応のAdobe製プリンター・ドライバーを標準装備している
4)完全なプラグ&プレイを実現している
といったWindow NT 5.0の新機能を説明した。
Windows NT 5.0の機能をデモしたのはAdobe Systems社のスタッフ。最初に「みんなはNTがプラグ&プレイだと言っても信じないだろうから」と言ってUSB接続型のシート・フィード・スキャナーを取り出し,マシンに接続して,自動的に認識される様子を示す。「ほら,簡単だろう?」と。
カラーのポスターを読み込ませ,「Adobe Photoshop 4.0」でみるみるうちに加工。フォントはTrueTypeとPostScriptの両方を同時に使って見せた。「アクション」(Photoshopの持つバッチ処理機能)も実演,マック版と同じことができるとアピールした。
さらに,Windows NT 5.0の新機能の一例として,「Find Printer」という機能を実演した。ネットワーク上にあるプリンター自動的に検索するものだ。プリンターの名前だけでなく,機能で検索できることを実証した。A4が出力できて,カラー出力可能と条件を入力して検索。適合するプリンターを見事に見つけだす。開場から拍手が巻き起こった。
会場は基本的に歓迎ムード,「ユーザーが必要なのはJavaそのものではない」と主張
Gates氏の基本的な論調は「今後は紙媒体の出版とWebを中心としたディジタル出版は融合していく。Webブラウザーで主導権を握っているのはMicrosoftである。DTPに関してもMicrosoftのソフトを使えばコンテンツの再利用ができるので有利」というもの。その証拠として,前日の9月30日に出荷を開始したばかりの「Internet Explorer 4.0」(IE 4.0)を見せた。IE 4.0はプッシュ型の情報提供サービスのビューワー「Active Channel」を統合している。Gates氏はWeb Active Channel Life Styleがもう始まっていると印象付けた。
これらの主張に対して観客は,大きな熱狂こそないが基本的に歓迎ムード。ただ,最後のQ&Aセッションではやや意地悪な質問も飛んだ。「講演の最中にJAVAのことが一言も出なかったのは偶然?」,「紙媒体の出版とWeb出版のどちらをあなたは愛しているのか?」といった質問だ。
前者に対しては「そういえば,C言語のことも『VisualBasic』も『Cobol』や『Pascal』のことにも言わなかったね。私はプログラマーだからプログラム言語は大好きなのに」とジョークでなごませてから,「実際のプログラムを考えたら,Javaにはまだ足りない部分が多い。ディベロッパーには素晴らしいかもしれないが,ユーザーが求めている機能を実現できるとは思えない」とコメントした。
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