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97年11月10日，米Apple Computer社は予告通り大規模な発表会を行った。Appleの暫定CEO（最高経営責任者） Steve Jobs氏が壇上に立ち，「PowerPC G3」（PowerPC 750）を採用した新製品（http://www.nikkeimac.com/hotnews/9711/g3.html）とダイレクト・マーケティングによる製品販売の開始を発表した。存在がウワサされるApple製NC（Network Computer）機のロードマップや，新CEOの公表といった重大な発表は，期待に反して行われなかった。

会場はAppleのおひざ元，California州Cupertino市のDe Anza CollegeにあるFlint Center（フリント・センター）。マックの誕生記者会見が行われた由緒ある場所だ。

現地時間午前11時始まったイベントは，前日からApple自身のWebサイトを使って告知されていた「クッキー」「ショッピング・カート」「ネジ回し」という3つのヒントの種明かしを行う形で進んだ。Apple社の新しい広告キャンペーン「Think different」を引き合いに出しながら，クッキーは新しいMPU PowerPC G3（very different Chip：Jobs氏）を採用した新機種，ショッピング・カートはインターネット直販（very different store），ネジ回しは，BTO（Build To Order）方式に対応した新しい生産体制（very different factory）を示す，と説明した。

Apple自身によって運営されるインターネット直販サイト「The Apple Store」（http://store.apple.com/）は，イベント直後の10日12時にオープンされ，注文を受け付け始めた。米国でAppleが販売する全製品をラインアップする。インターネットばかりでなく，電話での注文も受け付ける。ただし，北米以外からの発注は当面，受け付けない。

Jobs氏の説明では，ヨーロッパ，日本でも北米と同様のインターネット直販を98年春までに開始する。さらに北米では，教育マーケット向け専用サイトの立ち上げやパッケージ・ソフトの代理販売を来春をめどに始める予定だ。

新機種のG3マシンについては，ユーザーがマシンのコンフィギュレーションを選択できるオーダー・メード方式の発注を採用している。ユーザーはWebの画面でハード・ディスクやメモリーの容量，MPUの種類などを好きなように選択できる。このためAppleは自社工場の生産管理をBTO（Build To Order，受注後の組み立て）方式に変更した。Jobs氏はこの結果，ユーザーの選択肢が広がり，必要なスペックだけを選べ，新製品の出荷が素早くなり，Appleの不良在庫がなくなるとメリットを強調した。

The Apple Storeは「WebObjects」を使って運営されている。Jobs氏によるとこれは旧NeXT Software社が96年に米Dell Computer社のために構築したシステムが基本になっている。Dell Computer社のMichael Dell会長兼CEOといえば，97年9月に「私がAppleの経営者なら今すぐ会社を閉める」と発言して物議をかもした人物。

Jobs氏はプレゼンテーションの中でわざわざDell会長の写真を出してその話に触れ，モハメド・アリ氏をモデルにした新しい15秒のテレビ CM（アリ氏がシャドウ・ボクシングで相手を挑発する）を聴衆に見せた。これはDellをターゲットにしたものだという。その上で「Dellの強さを築いたシステムは今，Appleに全部そろった。我々はDellのマーケットを追っていく」と述べて観衆の喝さいを浴びた。

Jobs氏は最後に「Appleはビジネスの方法を根本的に変えつつある。すべては，クリエイトしたい人に世界最高の道具を提供するためなんだ」と，約1時間のスピーチを締めくくった。