Ken Bereskin氏インタビュー Rhapsodyに関する疑問点を聞く
[Tuesday, November 25, 1997 シリコンバレー・オフィス発、山田 剛良=日経MAC]
Ken Bereskin氏 米Apple Computer社 Senior Manager, Rhapsody Team Apple Developer Relations
97年11月,Appleは次世代OS「Rhapsody」のデベロッパー版の配布を始めた。開発は当初のスケジュールからやや遅れ気味だが,おおむね順調に進んでいるようだ。前CEO Gilbert Amerio氏の在任中は,Appleの危機を救う次世代OSとしてRhapsodyが盛んに喧(けん)伝された。だが,Amerio氏が退任し,Steve Jobs氏が実権を握ってからは,そのような声がAppleから聞こえなくなり,むしろMac OSへの注力(回帰)が盛んにアナウンスされるようになった。Rhapsodyは今後どうなるのか。Rhapsody担当のKen Bereskin氏に話を聞いた。
●最初にRhapsodyの位置づけを確認させて下さい
Rhapsodyは強力なネットワーク機能,安定性,データベースへの柔軟なアクセス機能,Javaのシームレスな統合といった特徴を持つOSです。開発環境としても非常に優れています。Rhapsodyによって開発者はまったく新しい,非常に柔軟で強力な環境を手に入れることになります。
ただし,Appleにとっての第一優先のOSはあくまでMac OSです。Mac OSからRhapsodyへの世代交代をユーザーに強いる意図はありません。ユーザーが必要な環境を選んでくれればいいと思っています。
●では,どのようなユーザーがRhapsodyの最初のユーザーになると予想していますか?
今,言えるのは最初のユーザーが開発者だ,ということだけです。まだ開発者版をリリースした段階なので,今後を予測するのは難しい。我々は98年にはRhapsodyがある程度のユーザーを獲得していると期待しています。Rhapsodyの強力なネットワーク機能や,強固な安定性を生かした用途で使われるでしょう。
結局,開発者がどんな種類の(Rhapsodyの機能を生かした)ソフトを書いてくれるかによってユーザー層は決まると思う。我々の予想では,パブリッシング関連のソフトで,ネットワーク機能を生かした(例えばワークフローを管理するような)ソフトが有望だと思います。
●YellowBox for Mac OSの可能性は?
その件は以前,ソフトウエア担当のAvie Tevanian執行副社長が「技術的可能性を探っている」とコメントしています。これ以上は特にコメントはありません。
●Rhapsodyに実装するJavaは100% Pure Javaなのですか。Microsoft Javaへの対応は?
97年8月に結ばれた米Microsoft社との包括的提携では,Javaの開発を共同で進めていくことが含まれています。ただ,それだけを強制されているわけではない。
我々のゴールは100% Pure Javaとそのコミュニティーのプロダクトをサポートすること。その上に(Microsoft Javaなどの)拡張機能を追加する考えです。つまり,我々は両方を同時にサポートできる。ようは開発者が正しいJavaだと思う方を選んでくれればいい。
●WebObjectsの有用性について強調していらっしゃいますが,製品版のRhapsodyにはWebObjectsが統合されるのですか?
WebObjectsは今後も製品として残ると思います。
WebObjectsの最もベーシックな部分に関してはRhapsodyに統合されます。開発者はこの機能を使って「デスクトップ版WebObjects」といったアプリケーションを開発できます。ただ,現在提供しているようなスケーラブルでパワフルなツールとしてのWebObjectsが必要なら,Appleから購入したいただいた方が早いでしょう。
●現在の開発進ちょく状況を教えて下さい
非常に順調です。11月の第1週に「Rhapsody for PC Compatible」のDeveloper版の提供を開始しました。11月の第2週から「YellowBox for NT」Developer版の提供を始めました。98年の早い時期,たぶん1月には,プレミア・リリースを始める予定。このバージョンから一般への販売を始めます。98年の後半(注:取材時のニュアンスでは9月か10月あたりと思われる)にはユニファイド・リリースを出荷したいと考えています。
Rhapsody for Power Macintosh,Rhapsody for PC Compatible,YellowBox for Windowsは,基本的に同じコードがベースになっています。今後もほとんど同時に出荷していきます。
●パッケージの販売を始めた場合,価格帯はどの程度になりますか?
まだ,コメントできる段階ではありません。少なくとも最初のリリースでは,(Windows NTのように)複数の異なるパッケージは用意しません。もちろんユニファイド・リリースでは,用途によっていくつかのパッケージを用意する可能性があります。
現在のMac OSのパッケージよりは高くなるでしょうが,あなたが心配するほど高価にはならないと思う。現在のOPENSTEPとMac OSパッケージの中間くらい(数万円)になるでしょう。
●YellowBox APIを使ったアプリケーションはどのプラットフォームでも同等のパフォーマンスで動くのですか?
基本的にはプラットフォームでパフォーマンスの差は出ないと考えています。我々はPowerPC版に一番力を入れますが,元々完全に同じコードからPowerPC版,Intel版,YellowBox for Windowsを生成するわけで,大きく実行速度が変わるとは思いません。
●Display PostScriptはハードウエア・アクセラレーションできるのでしょうか? できるとしたら,そのための情報公開はハードウエアの開発者に対して行っているのですか?
イメージ・モデルやグラフィクス・モデルについてはアクセラレートは可能です。ただ,アクセラレーションのアーキテクチャーは現在,ハードウエア・メーカーなどと協議中しながら策定中です。ユニファイド・リリースには間に合っているはずです。
(聞き手=山田 剛良,シリコンバレー・オフィス)
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