原田アップル社長, 福岡で明るい未来を語る
[Tuesday, April 21, 1998 佐藤 千秋=日経MAC]
原田永幸アップルコンピュータ社長は,1998年4月18日,福岡市で開かれた,福岡市歯科医師会C&Sパソコン研究会が企画した講演会に出席,「これからのアップルコンピュータ」をテーマに講演した。
公演中,原田社長は,「98年5月11日から開催するWWDC(World Wide Developers Conference)のキーノート・スピーチで,Steve Jobs暫定CEO(最高経営責任者)が,重大な発表を行うので,ユーザーはぜひ注目してほしい」と語った。「その内容については,一切話せないし,私(原田氏)自身もその発表内容のすべてを知っているかどうかすら不明」と続け,来場者の期待をあおった。
さらに,「経営が健全化しつつあるアップルにもう不安はない」とアピール。安心してマックを使い,仲間にも自信を持って勧めてくれるよう,壇上から語った。
原田社長は,米Apple Computer社の業績回復は,「Jobs氏の素早く的確な判断によってもたらされた」と,全面的な支持を表明。公演後の単独インタビューでは,あくまで暫定を強調するJobs氏に対して,「私自身は,Jobs体制が続くことを望んでいる」と,意味深長な発言をした。
クリエイティブなユーザー間では マックがマジョリティー
講演ではコンピューター・ユーザーを2つに分類。定型業務を効率化するものと,クリエイティブな仕事に役立てるユーザーだ。「前者はWindowsでもよいだろう。しかし,創造的な仕事をする方はマックを選ぶはずだ」と,シェア競争に,2度とかかわらない方針を表明した。
今年もアップルの最重要課題は,PEN(Publishing,Entertainment,Newmedia),SED(Science,Engineering,Design)と同社が呼ぶ,コア・ターゲットを確実に押さえることと,原田社長は言う。「マックはマイナーなパソコンで,みなさん(歯科医)は,さらにニッチなユーザーと思われていませんか。しかし,そんなことはありません。アップルが最も重要視している分野のユーザーで,この分野ではマックこそマジョリティーなのです」と,持ち上げて,会場を沸かせた。
あるいは,パソコンの良さを理解し積極的に使う「アクティブ・ユーザー」と,業務上仕方なしにパソコンを使っている「パッシブ・ユーザー」にも分けて見せた。「今後のアップルは,むしろ,後者に向けて情報発信していかなければならない」とした。
また,パソコンを使う人と,買う人が異なるため,マックが浸透しにくい企業ユーザーに対しても,「マックを知らない人にこそ,マックを知らせていかなければならない」と,新しいキャンペーンを展開することも約束した。経営者にマックを認知させることで,現場がほしがっているマックを買えるようにするというのだ。
BTOでコンシューマー・マーケットへ
現段階は,コア・ターゲットである,プロフェッショナルやプロシューマーへのマックによるソリューション提案がメインと断りながらも,再度コンシューマー・マーケットへ打って出る可能性もほのめかした。それは,インターネットを利用したBTO(Build To Order)によるもの。「Performaラインの失敗は,製品力が原因ではない。ユーザーのニーズを読み違えたことによる流通量の誤り」と分析。マーケットの声を正しく判断するためにも,必須(ひっす)のものと,BTOを位置づけている。
ただし,アップルコンピュータは,BTO実施に必要な,製品生産のためのハード,受注のための窓口などのソフトともに,全くの未整備の状態。BTO開始の時期を決めてプロジェクトを進行できるような段階にも至っていない。流通関係者へも,「マーケット調査が狙い。米国でもApple Storeをのぞいたあと,販売店へ出掛けてマックを買うという例が多い」と,説得に苦労している様子。総合すると,BTOはどんなに早くても年内に可能かどうかというところだ。
小型軽量の新型PowerBook登場は望み薄
デスクトップ機のシェアに対して,PowerBookのそれは依然著しく低い。「その原因も分かっています」と,原田社長。「大きくて重いから」! しかし,売れていないのは日本だけなので,PowerBook2400シリーズのような日本マーケットのニーズに合った携帯に適した新型PowerBookの登場の可能性は低い。米国マーケットに合わせて操作性を重視した,大きな製品の投入が優先されることが予想できる。
前出の「パフォーマンスの向上」「マルチメディア機能の向上」「インダストリアルデザインの向上」の点から見れば,233MHz以上のG3チップを搭載し, 次世代メディアのDVD-ROMドライブにも対応する可能性が高い。また,デザインは,大きいなりに,PowerBook 2400シリーズのようなユーザーが親しみやすい柔らかな形状をアレンジしたようなものかもしれない。
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