Apple,株主総会を無難に開催 ローエンド機の投入は98年後半
[Thursday, April 23, 1998 シリコンバレー・オフィス発,山田 剛良=日経MAC]
米Apple Computer社は98年4月22日(米国西海岸時間),定期株主総会を行った。会場はCalifornia州Cupertino市にあるAppleの本社ビル「Infinite Loop」。午前10時を少し過ぎて始まった総会には500名近い株主が詰めかけた。メイン会場のホール(350人収容)だけでは足りずに大画面ディスプレイを用意した別室が用意されたほどだ。
2期連続で黒字を計上したこともあり,会場は和やかな雰囲気。最初にSteve Jobs暫定CEO(最高経営責任者)が登場し,ボード・メンバーを順に紹介した際に,米Intuit社のBill Campbell社長兼CEOのところで軽いブーイングがでた程度(Intuitは先週,同社の家庭用会計ソフト「Quicken」のマック版の開発を終了すると発表した——後述)。後は予定された議題をつつがなく進行した。議題とは例えば,Jobs氏,Edgar Woolard氏(元DuPont de Nemours社会長),Larry Ellison氏(Oracle社会長兼CEO)の役員再選(今後2年間)といった内容。
最後が株主からのQ&Aセッション。ただその前にJobs氏が「申し訳ないが新製品については質問をされても話せない」とクギを差したので,注目に値する発言は最後まで出なかった。総会は1時間少々で大きな波乱なく終了した。
今年後半にコンシュマー市場へ再挑戦 Intuitとは来週,共同で発表を行う
とはいえ,Q&Aセッションでは多くの株主からの質問があり,主にJobs氏が答えた。
Intuitがマック版Quickenの開発を終了した件については「我々が今年後半に再び,コンシュマー市場へ挑戦する計画について,Intuitに伝わってなかった。この件はすでに話したので来週(4月27日以降),AppleとIntuitは共同でプレス・リリースを出すだろう」と答えた。Jobs氏はコンシュマー市場へ再挑戦する計画の詳細は述べなかったが「今年後半」という時期については再三,言葉にした。
Newton技術の売却やライセンスに関する質問には「2,3の企業から“非常に少額の”オファーがあったのは事実」と認め,「少しのお金のために未来を失うわけには行かない」と述べた。Jobs氏は,旧Newtonチームは非常に素晴らしい才能の集まりで,彼らにはマックのハードやソフトの改良のために働いてほしかったこと,Newton技術の一部は今年後半に投入予定の“コンシュマー市場製品”に応用されると説明した。
ディベロッパー・プログラムの改訂については「マック市場に注力している上位100社により手厚くコミットするため」と説明した。小規模なディベロッパーを軽視したわけではないが,Appleの体力には限界があり,バランスを考えると両方にいい顔はできないというわけだ。「Appleが製品をたくさん売ることが,小規模なディベロッパーのビジネス・チャンスにつながると思う」。
企業マーケットについては「現在は企業マーケットへの特別なプランはない。それより教育,出版,グラフィックスといったコア・マーケットに集中すべき」と答え,互換機については「Appleの収益を阻害する形では認められない。12カ月後にAppleの収益構造が十分に改善されていれば,可能性が出てくるだろう」と従来の主張を繰り返した。CFOのFred D. Anderson氏はAppleの粗利益率(gross margin)が,最近の3四半期で,23,23.5,23.8%と徐々に向上している点を挙げ,Appleの収益構造が改善されつつあると説明した。
Jobs氏は「暫定」の肩書きを取る気はないのか,という質問に「みなさんは『暫定』という言葉について心配するが,暫定でなかった最後のCEO(Gil Amelio氏のこと)については心配しなかったじゃないか」とジョークでかわし「私が知る限り,業界で最高のマネージメント・チームがここにいる。(最近の好調は)私1人の仕事ではない」とまとめた。
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