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見えてきた今後のハードウエア・ロードマップ
I/Oはすべて業界標準へ

[Monday, May 18, 1998 WWDC特派,林 伸夫+山田 剛良=日経MAC]

今回のWWDCではソフトウエアのロードマップのみならず,ハードウエアの今後の方向性も明らかにされた。

「Power Macintosh and PowerBook Directions」と題されたセッションには,ハードウエア・エンジニアリング担当の上級副社長Jon Rubinstein氏とマーケティング担当副社長Phil Schiller氏が登場,今後のマック・ハードウエアの概略を語った。

いきなりフロッピー・ディスクに大きな×印を付けたスライドを見せ「フロッピーはすでに役割を終わった。今後はより業界標準に近い,最新のI/Oを採用していく」と宣言した。最新のI/Oとは例えば,iMacで採用が決まっているUSB(Universal Serial Bus)であり,IEEE1394(FireWire),IrDA(赤外線),100Base-TX Ethernetを指す。ADB,マック・シリアルといったマック固有のインタフェースはもちろん,SCSIについても段階的に搭載を中止する腹づもりのようだ。

ただ,比較的準備が進んでいたIEEE1394に比べ,USBの方は明らかに混乱気味。間もなくドライバーを記述するための「DDK」が公開される(Appleの「間もなく」を本気で信用する開発者はいない)とアナウンスがあったのみで,開発者を満足させる技術情報が十分に開示されなかったようだ。すでにiMacという「売れそうな」製品の出荷がアナウンス済みのため,情報不足のディベロッパーはビジネス・チャンスを逃すまいとやや殺気立った気配さえ感じられた。

アップルコンピュータ事業推進本部長の福田尚久氏によると「すでにいくつかのベンダーと協力してiMac向けに周辺機器を作ってもらっている」という話。プリンター,スキャナー,高速モデム,フロッピー・ドライブといったあたりのiMac用USB周辺機器は(選択肢は少ないが)一通り,そろいそう。シリアル-ADB変換器の出荷を計画しているベンダーもあるという話だ。

このセッションではまた,400MHzのPowerPCを搭載したPower Mac G3とPowerBook G3 seriesのデモが行われた。あくまで「技術デモンストレーション」と断りながらも「PowerBookは400MHzのPowerPCを載せてもなんの問題もないんです」と,登場が近いことをにおわせた。

しかし,マック・ハードウエアの真のロードマップが明らかになったのは続くセッションだった。

今後,マックは4つの製品分野に単純化

今後,マックは図のように4つの製品分野に整理される。

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これにより,これまで何10種類もの製品系列に複雑に分岐していた混乱が解消される。マザー・ボードの設計もこの4つが基本となるため,製品ごとの価格は今後低く押さえられるようになる。ユーザーにメリットをもたらすとともに,企業としての収益性を高めるのに貢献する。

また,系列内でのランク付けは装備する周辺機器ないしはポートの種類などで実現する。

4種類のシリーズは以下の通りだ。

  1. プロフェッショナル向けデスクトップ機 
    • 現行のPower Mac G3シリーズの延長形。
    • 高速ネットワーク,マルチメディア・コンテンツの高速処理機能などが入る。3Dのレンダリングなども数10倍単位で速くなる。Silicon Graphics社(SGI)などこの分野を独占しているワークステーションの市場に食い込んでくことになろう。

  2. 一般消費者向けデスクトップ機
    • iMacシリーズ。すでにADBポートはUSBに,10CASE-Tは100BASE-Tに変更され,フロッピー・ドライブは内蔵していない。またシリアル・ポート,SCSIポートも付いていない。今後こうした構成はハイエンドのデスクトップ機にも導入されていく。
    • 現在のところ製品バリエーションは発表していないが,いずれDVDドライブ内蔵,Firewire内蔵,色違い,サイズ違い,液晶タイプなどの製品が登場してくると思われる。

  3. プロフェッショナル向け携帯型
    • 5月に出荷開始されたPowerBook G3シリーズとその後継。
    • 今回はローエンドのデスクトップ機を置き換えるような製品群だけとなった。その先の製品の計画については堅く口を閉ざしたままだが,今後Apple社内の体制が整ってくるに従い,サブノート型,デザインの改良などが徐々に行われる見込みだ。

  4. 一般消費者向けの携帯型パソコン
    • 99年にはこのカテゴリーの製品が登場することになるというが,どんな形になるのかはまだ具体的な発表はされていない。
    • しかし,Newtonにキーボードを付加した形の現行商品eMateのようなマシンに,機能を絞ったMac OSを載せたものになるのではと見られている。
    • こうした軽量型デバイスは真のモバイル端末として使えるような工夫が加えられるはずだ。たとえばデスクトップ・マシンとシームレスに仕事を連携するためのソフト,そしてワイアレス通信(これは赤外線ではなくラジオ無線になるのではないか)を使ったハード装置が付加されるようだ。

USBへの移行は速やかに行われる

この4つの製品分野に共通する大きな進化はUSB,Firewire,100BASE-Tの標準装備,DVDへの対応などだ。USBが付くことでシリアル・ポート,ADBはなくなる。フロッピー・ドライブやそしてSCSIポートも徐々に無くなっていく。SCSIはFirewireが取って代わることになる。

デスクトップ・マシンのUSB対応も速やかに行われるはずで,次に出てくるマシンには既にUSBポートがついていると見られる。

ただし,iMacのように全くの新規ユーザーをターゲットにすると同時にコスト・ダウンを徹底的に追及した製品とは異なるため,しばらくは併存の状態が続く。MIDIアダプター,さまざまなデータ収集用の専用機器などが「プロフェッショナル・ユーザー」には普及しているからだ。

来年(99年)に発売されるマックにはデスクトップ・マシンでもシリアルポートを持たない製品も登場するかもしれない。しかし,そのころにはUSB対応のMIDIアダプター,あるいはシリアル・ポートを前提とした旧製品をUSB経由で接続するための「シリアル・エミュレーション・ボックス」などがたくさん市場に登場しているはずだ。移行期のさなかにはかなりの混乱が予想されるが,徐々に解決していくだろう。

USB導入のメリットは

混乱が予想されるのに,なぜあえて,USBなのか?

理由はさまざまあるが,その第1はスピードの向上だ。USBの規格上の転送速度は最大12Mbpsだ。従来のシリアル通信とは格段の速度向上,10BASE-Tとほぼ同じ程度の通信速度が手に入る。ユーザーにとっての扱いも簡単で,電源を入れたままでの状態でいつでも抜き差しができる。完全なプラグ・アンド・プレイが実現できるというわけだ。

1本のバスの上に127個までの装置がつなげられるから,これまでシリアル・ポートが足りなくて困っていたユーザーには朗報だ。

開発者にとってもメリットが大きい。USB機器はIntelマシンでも今後共通して使えるから,開発投資を広く回収することができる。これまで,マック用のADB機器を開発してきたメーカーも多数あるが,これで市場が広がることになる。もちろん,接続用のソフトさえ作られればIntel向けのジョイ・スティックやプリンターなどもマックで使うことができるかもしれない。

USB対応でどんな製品が考えられるか?

USB規格はまだ生まれたての規格だ。今後コンソーシアム内で発展の道が探られることになる。この規格の成長次第で,これからの発展の余地がまだまだあるということになる。

現在のところ,USBで作られてくる製品にはキーボード,マウス,フロッピー・ドライブ,プリンター,モデム,TA,タッチ・スクリーン,MIDIアダプター,各種データ収集端末装置,MOドライブ,ハード・ディスク装置,テレビ,ビデオのコントローラー,MDプレイヤー,ホーム・コントローラー,ホーム・セキュリティー装置。ローエンドのディジタル・カメラの中にはUSB端子付きのものも出てくるだろう。

100BASE-Tは規格の持つ性能を発揮する

もう一つ標準装備される100BASE-Tもドライバー・ソフトの改良で格段に速くなる。

これまでのOpenTransport 1.xに含まれているネットワーク・カードとやり取りをするドライバー部分はそれほど高速化されていないPCIバスやCardBusを前提に設計されている部分があり,パフォーマンスが出なかった。

98年後半から99年にかけてメモリー・バスクロックが100MHz以上に引き上げられるとともに,PCIバスも実効転送速度約30MB/sに対し,240MB/sに高速化される。こうした足回りの強化に伴って,ネットワーク・カードとの通信部分を全面的に書き直した。来るべきギガビット・ネットワークへの準備体制が整った(David Schlesinger,Tsuri Williamson Mac OS Networking)としている。

この部分はサード・パーティのカード・メーカーにも公開されるので,これに対応した100BASE-Tカードは1桁パフォーマンスが上がるはずだ。国内のカード・メーカーもこの新しいフレームワークを使ってドライバー類の開発を進めてほしいものだ。

進化するPowerPC

PowerPCのセッションではMotorolaが先ごろ発表した「AltiVec」技術について説明がされた。Motorola/IBMはAltivecを搭載した「PowerPC "G4"」を98年末から99年前半に量産出荷する。

「PowerPC史上,最大のアーキテクチャー進化」(Motorola社のKeith Diefendorff氏=写真)と自画自賛するAltiVecを搭載したPowerPCは銅配線,0.20マイクロメートル配線といった次世代技術を同時に採用して出荷される。AppleはこのPowerPCを採用したMacintoshを「99年前半に出荷する。QuickDraw,QuickTimeといった技術はAltiVecに最適化して出荷する」(Product ManagerのGlenn Fisher氏)。

AltiVecはPowerPCに内蔵するベクトル演算専用ユニット。DSPのような演算を代行する専用のコプロセッサーを内蔵したと考えるとよい。128ビット幅のレジスターを32個搭載し,ベクトル演算を最大30倍高速化する。具体的には画像のレンダリング,ムービーの圧縮・伸長といった用途に威力を発揮する。一時期,AppleはオランダPhilips社が開発した画像処理アクセラレーション・チップ「TriMedia」の採用を検討した時期があったが,AltiVec技術の登場でもはや不要だろう。

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This page was last updated on Sun, Jun 21, 1998 at 2:11:53 PM.
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