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Newerの技術トップに聞く 信頼性と100%の互換性が“商品”です [Wednesday, May 20, 1998 シリコンバレー支局,山田 剛良=日経MAC]
●最初に登場したG3カードのいくつかにはバグが存在したようだが,それが起こった理由は? 最初に確認しておくが,Newerのカードは最初からバグなしで出荷された。だからこの話はG3カードの一般的な話として聞いてほしい。 PCI Power Macはほとんど共通の仕様と思われているが,実は搭載されているROMの仕様がそれぞれ微妙に異なる。この違いをきちんと認識ができていないと,バグを発生しやすい。あるマシンでは正常に動くのに,他のマシンではダメということが起こる。 こういう問題が発覚しやすいのは,ハイエンドの周辺機器を使った時だ。Adaptec社(http://www.adaptec.com/)のUltara SCSIカード,Scitex社(http://www.scitex.com/)のスキャニング・ソフト,Media 100社(http://www.media100.com/)のビデオ取り込みカード。これらは多くのG3カードでよく問題を起こす。正常な動作がベンダー側から保証されているのは我々のカードだけだ。 我々のカードは他社のそれと比べてやや高額だが,それはカードの信頼性を高めるためにかなりの投資をしているからだ。 ●Power Mac 6100用のカードとPower Mac 7100/8100のカードを作り分けた理由は? もちろん必要性があって分けた。この結果,我々のカードと(先に同様の製品の出荷を開始した)米Sonnet Technology社(http://www.sonnettech.com/)のカードでは信頼性やパフォーマンスに差が出るはずだと私は思う。 まず,6100系のマシンだが,G3カードを装着するPDS(Processor Direct Slot)バスが並列型ターミネーションを要求する。しかし7100/8100には直列型ターミネーションが必要だ。これ1つ取ってもハードウエアの対応は全然異なり,ジャンパーやスイッチ程度では解決できない。だから1枚のカードで共用するのは非常に難しい。Sonnetはその辺で苦しんでいるんじゃないかな? EMI(ErectroMagnetic Interference:電磁妨害)規制の問題もある。仮に6100用のカードを7100/8100に使うと,ケース内に大きな空間ができてしまう。この結果,EMI規制を通過させるのが難しくなる。 もう1つ。6100と7100/8100ではバスのターミネーション以外にもマザー・ボードに細かい違いがあり,信頼性向上やチューニングのためには,G3カード側でマシンを識別する必要がある。だが,Power Mcc 6100/7100/8100には,PDSにマシンを識別する手段が用意されていない。 ●Sonnetに対するアドバンテージは まず,信頼性だ。先ほども言ったように我々は100%の互換性を保証している。 2番目に我々の方が最適化ができていること。同じ6100にカードを差して比較すると分かる。CPUのベンチマーク・スコアは我々の方が,せいぜい5%ほど良いだけだ。ほとんど同じと言ってよい。だがディスクのスコアは60%も我々の方が高くなる。これはカードを分けた理由でもある。特にSCSI周りの最適化はマシンを分けないと難しかった。 消費電力も我々の製品の方がはるかに低い。我々のカードは長時間使ってもほとんど発熱しないが,Sonnetのカードは持てないほど熱くなる。 我々は数千オーダーでβテスターを使っている。Sonnetはせいぜい20人くらいだろう。この差は信頼性の差になって,必ず跳ね返ってくる。 我々はNewerのブランドに自信を持っているし,ブランドを信頼してくれるユーザーを裏切るわけにはいかない。 ●NuBus Power Mac用カード,2400用の出荷が遅れた理由は何ですか? 一番の理由は信頼性の確認に時間がかかったことだ。NuBus Power Mac用カード場合は遅れた理由が3つほどあって,それぞれをクリアするのにかなり時間がかかった。 1つめはRadius社の動画圧縮機能を持つビデオ入出力ボード「Video Vision Studio」との互換性。2つめはクロックアップ・キットを取り付けたマシンへの対応。アップグレード・カードのユーザーの多くはこういう製品を使っているので無視できなかった。我々のカードは44MHzのバス速度でPDSビデオ・カードも問題なく動く(注:Sonnet Technology社はクロックアップ・キットの併用はチップの寿命を縮めるから推奨しない,とコメントしている)。3つめは先ほども言ったSCSIバスの最適化だ。 Power Book 2400用カードについてはこれまでのノウハウが適用できなかったのが大きい。当初,我々は2400用の方を1400用より先行させて開発していた。しかし,2400は従来のマシンとROMの内部構造が大きく違ったので,ノウハウを流用できなかった。もう1つのハードルは実装密度の高さ。すでにどちらもクリアしたので,もうすぐ出荷できる。会社としては非常によい経験を積ませてもらったと思っている。 出荷が遅れて一番悔しい思いをしているのは我々自身。(売れると分かっている商品だから)毎日,お金を失っているわけだ。我々はこのカードの出荷をあと1カ月早めることはできた。それを我慢したのは「100%互換性,強固な信頼性,完全な最適化」のどれにも妥協したくなかったからだ。 ●G3カードを使うとビデオの性能が向上するのはなぜですか? メイン・メモリーと,ビデオ回路との間のデータ転送はDMA(Direct Memory Access)を使っている。だから本来,CPUの処理とビデオ処理の速度は関係ない。しかし実はDMAのコントロール・エンジンをCPUが処理している。DMAによる転送速度自体は変わらないが,DMAのアクセス・サイクルが高速になる。そのためビデオの性能が向上する。従って,NuBus Power Macでも同じ現象が起こる。 ●NuBus Power Macはアーキテクチャーが古いのですが,G3カードで本当に効果がありますか アーキテクチャーの問題はほとんどない。同じハード・ディスク,同じメモリー搭載量ならほぼ同じパフォーマンスが出せる。 アーキテクチャーの問題とはつまりシステム・バスの速度だ。これまで高速なシステム・バスが必要だったのは,つまり2次キャッシュへのアクセス速度が欲しかったから。750は高速な専用バスを持つ。そうすると(システム・バスを使う)次に高速なデバイスはメモリーになるが,DRAM(メイン・メモリー)へのアクセス速度は18MHzに過ぎない。つまりNuBus Power Macでもバンド幅は十分なんだ。 同じ話は1400用のカードにも言える。あのマシンはメモリー(システム)バス幅が32ビットしかないが,それでも十分なパフォーマンスをたたき出す。 ●しかしPCI Power Macはインタリーブでメモリー・アクセスの高速化を図ってますよね? 604eカードの時の実験結果なのだが,インタリーブの効果は2次キャッシュの容量によって大きく変わる。
つまり,キャッシュへのヒット率が上がると,(大量のメモリー転送というインタリーブのメリットを生かす)メモリー転送の比率が減るため,インタリーブの効果が薄れる。 750カードの2次キャッシュはこの時と比べても十分に大容量で高速。インタリーブの効果が大きく出るとは思えない。 ●2次キャッシュの高速化,大容量化はどの程度効果がありますか 当社は容量1MBで1:1キャッシュ・レシオ(CPU動作速度と2次キャッシュ動作速度の比率)の製品を出荷しているが,これによる高速化の効果は2:1キャッシュ・レシオの製品に比べて10〜20%。まぁ平均で15%といったところだろう。 問題はたかだか15%のために7倍も高価なSRAMが必要なこと。これに投資できるのはごく限られたプロフェッショナルだけだ。一般のユーザーには必要ない。 ただ,2次キャッシュの効果はアプリケーションによって「非常に」異なる。キャッシュ・フレンドリーにプログラミングされていないアプリの場合は全然効果がない。 ●どんなアプリがキャッシュ・フレンドリーですか マトモに書かれたソフトだ。例えば「Adobe Photoshop」がそうだね。私の経験ではドイツGoLive社のWebページ編集ソフト「CyberStudio」も750カードで驚異的に速くなった。 CPUエミュレーションもキャッシュ向きのアプリケーションだ。68Kエミュレーターはもちろん,「VirtualPC」(米Connectix社製のIBM PCエミュレーター)なども750の力を活用できるソフトだと思う。
●現在のPowerPC 750は,システム・バスに対する動作クロックの倍率が8倍までです。ということは,PCIマックで
原理的にはそうだ。しかし我々は,CPUに対して見かけ上システム・バスの速度が倍になったように「だます」技術を持っている。だからPCIマックなら, ●今後の製品展開を教えてください Nubus Power Mac用に続いて,5月末にPower Computing社の「PowerBase」用,SuperMac社の「C500/600」用のアップグレード・カードを出荷する。PowerBook 2400用のカードの出荷は7月の予定だ。 それから6カ月以内にみんなを「あっ」と言わせる製品を出荷するからお楽しみに。 我々の基本的なポリシーは,そこにアップグレード・カードを望むユーザーがいれば,製品を提供するというものなんだ。 ●68Kマシン向けのPowerPC 750アップグレード・カードの可能性はありますか? また, Power Mac 7200や5400/6400のようにCPUを取り外せない製品はやはりアップグレード不可能なのでしょうか? 68Kマシンに関してはROMの問題があり,技術的に克服が難しい。(68K用アクセラレーターの開発を明らかにした)Sonnetがどういう手を使うかは分からないが,68K用カードは技術的に不可能だと私は思っている。 最大の問題は68Kマシンに搭載されているROMがPowerPCのコードを一切知らない,という点だ。だからほとんど不可能か,仮にできても非常にパフォーマンスが悪くなると思う。かつて,DayStar Digital社が「Turbo 601」というPowerPC 601を使った68Kマシン向けアクセラレーターを出荷していた。あれはAppleからROMのライセンスを受けたから実現した。現在のAppleの状況を見ると再びROMライセンスを行うとは思えない。 もう1つ。68Kマシンはメモリーの搭載量の制限があったり,搭載ハード・ディスクが遅くて容量の小さいものが多い。「iMac」のような魅力的な低価格製品が発表された今となっては,経済的に見合わない気がする。 もう1つの質問。Power Mac 7200や5400/6400に関してだけど,少なくともROMの問題はないね。 ●6カ月以内に出荷するという「お楽しみ」の製品について,もう少しヒントをくれませんか? ヒントは君にもう話したよ。とにかく,今後しばらくは我々の動きから目を離さないことだ。
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