フォーチュンヒル社長インタビュー 「意欲を持って会社再生に取り組む」
[Tuesday, August 11, 1998 佐藤 千秋=日経MAC]
大阪・高麗橋のソフト販売代理店フォーチュンヒルの吉田勇社長は,一部業界関係者の間に流れていた,同社に対する噂(うわさ)を否定。会社再建に意気込む姿勢を語った。同社の取り引き銀行も支援に動いている。
(写真中央のビルにフォーチュンヒル本社が入る)
98年8月8日・大阪・梅田。フォーチュンヒル社長吉田勇氏は,さっぱりとした姿で待ち合わせ場所に現れた。ただし,その表情には,やはりここしばらくの忙しさが疲れとなって表れている。
本誌:98年7月末から,フォーチュンヒルが倒産したのではないかと言う噂が,業界関係者の間で流れているが?
吉田氏「確かに,7月31日に会社の玄関に,破産申請する旨の張り紙をした。業務も6月から実質的に休止していた。しかし,8月6日にメーンバンクの住友銀行から,業務継続を勧められ,同行からの支援を取り付けて,8月10日から業務を再開することにした。破産申請も取りやめた」。
本誌:従業員の処遇はどうなっているのか?
吉田氏「破産申請を覚悟したときに,20数人いた従業員を全員解雇した。これまで一生懸命に働いてきてくれた方々に,経営者として非常に申し訳ないと思っている」。
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取材中,吉田社長は何度か,「経営者落第」と言う言葉を口にした。日本全体の景気が低迷している上,95年からパソコン・バブルが終息しているという景気後退期でも,自分に力があれば,従業員の生活を守っていけたはずだと考えている。ユーザーにも心配させずに済んだと言う。
本誌:フォーチュンヒルの取り扱い製品のユーザーへの対応は?
吉田氏「サポートは,今後ウイニングランソフト・ウェアが担当する。登録ユーザーのリストなども移管している。当社へ直接代金を振り込み,ソフト購入を申し込んでいるユーザーには,返金の手続きをとっている最中だ。手が足りないので,少しお待たせすることになるが,間違いなく必ずお返しするので,今しばらく待ってほしい」。
本誌:長く手掛けてきた「Ray Dream studio」など,米MetaCreations社製ソフトを手放すことになったわけだが?
吉田氏「私がデザイナー時代から使ってきたソフトであるし,手放すのは残念だ。社員の中にも「Ray Dream」が好きで仕事をしてきたものも多い。ぜひ,後を引き継ぐウイニングラン・ソフトウェアの方々には頑張ってほしい」。
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フォーチュンヒルの売り上げに大きく貢献してきたMetaCreations社製品の販売権を失った吉田社長は,代理店業務に興味を失ったようだ。代理店業務の重要性を理解したうえで,今度はモノ作りに取り組むようだ。
本誌:今後販売していく商品は確定しているのか。今後のパソコン関連の業務を続けていくのか?
吉田氏「販売代理店業務を続けていくつもりは,今のところない。以前から業務の一部であったが,開発を主体にしていきたい。ソフトというより,コンテンツを手掛けていく。詳細はまだ公表できないが,これまで培ったノウハウを必要としている,ほかの業界に広く提案したい。もちろん,これまで扱ってきたものに限らず,新しいものにも積極的に取り組んでいく」。
本誌:銀行も新しい取り組みに興味を示しているということか?
吉田氏「私の頭の中にあるプランは示している。そのうえで協力していただけるといっていただいたので,成功に向け一層努力していくつもりだ」。
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大阪はやはり地方都市,モノを売っていくには東京がいい。しかし,東京では,モノを売ることに忙しく,新しいモノを作っていく時間がない。大阪にはモノを育てていく時間がある。吉田社長は,そう気づいたそうだ。今後の事業展開に話題が移ると,吉田社長の表情も一瞬明るくなった。再起に取り組む気持ちは本物である。
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