雨降る深夜の秋葉原に長蛇の列 原田社長はホームズ姿で登場
[Saturday, October 17, 1998 佐藤 千秋=日経MAC]
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●深夜0時の発売前から,「ラオックス ザ・コンピュータMAC館」に並ぶマック・ユーザーたち。人垣がぐるりとワンブロックを取り囲み,隣のブロックの「ヤマギワ
リビナ本館」前まで続いた。同店をはじめ,300人近い行列ができた店もあった |
98年10月17日深夜0時。日本で「『Sherlock』が,Mac OS 8.5付き」(米Apple Computer社暫定CEOのSteve
Jobs氏)で発売された。
台風が接近し,秋雨が時折激しくなる悪天候にもかかわらず,東京・秋葉原の主要マック販売店前には,販売開始前からすでに長蛇の列が出来上がり,深夜0時を今か今かと待ちかねていた。
深夜販売を敢行したのは,「T・ZONEアップル館」「イケショップ」「ソフマップ 秋葉原2号店
Mac Collection」「ツクモ DOS/Vパソコン館」「ラオックス ザ・コンピュータMAC館」の5店。価格はいずれもメーカー希望小売価格の1万3800円。東京・秋葉原以外では,大阪・日本橋のマック販売店でも,深夜発売を行った。
日本が最初の発売国
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●「T・ZONEアップル館」で最初に購入したユーザーは,原田永幸アップルコンピュータ社長と記念写真に納まった |
販売開始の数分前には,アップルコンピュータ社長の原田永幸氏が,天眼鏡とパイプを手にし,ケープ付きのコートを着込んだシャーロック・ホームズのふん装で,T・ZONEアップル館に登場。しかも同社の英国人スタッフであるリチャード・ウォーラー氏を助手のワトソン役として従えるという念の入れようだ。こんな道化を社長自ら演じる理由は,もちろんMac
OS 8.5最大の目玉機能である新検索システム「Sherlock」をアピールするため。
午前0時10秒前からカウントダウンを開始。ゼロの声とともに,クラッカーが鳴り響き,販売解禁となった。新OSが販売される国で最も日付変更線に近い日本のユーザーが,世界で最も早くそれを手に入れた。
購入者には,Tシャツなどがプレゼンとされたほか,アップルコンピュータの広報担当嬢が,ホームズ姿の原田社長とのツー・ショットをインスタント・カメラで撮影し,原田社長のサイン入りで写真をプレゼントする企画が好評だった。
販売店はてんてこ舞い
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●プラカードを作って,Mac OSを応援に来た熱狂的マック・サポーター。アップルの新製品が深夜発売開始されるたびに,刺激的な看板を持って現れることで有名。今は亡きパソコン通信サービス「日経MIX」でも常に熱いメッセージを送り続けた人でもある。k.kissさんこと岸本武士さん(原田社長の左)とpoplifeさんこと本沢幸久さん(同右)。今回の看板は「輝く未来へMac
OS 8.5。素晴らしい明日へ駆け抜けよう!!/たたきつぶせ!!Windows 98。撃墜!!Windows
98」だった |
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●「T・ZONEアップル館」の前では,iMacにMac OS 8.5をインストールし始めた。原田社長も,うれしそうに見入っていた |
今回の深夜発売での販売数は,秋葉原地区で1500本強(本誌推定)。各店とも用意した景品がちょうどはけたようだ。亜土電子工業の金山和男社長は「プレゼントのTシャツは並んでもらった人全員に行き渡ると思う。準備は大変だったけど,ユーザーさんに喜んでもらえて私も嬉しい。明日の秋葉原も大繁盛ですよ」と興奮気味に語ってくれた。同店では300本を売り上げた。
「深夜販売の準備に取り掛かったのは,30時間前。何とか間に合ったようだ。これだけお客さんが詰め掛けてくれると,頑張ってよかったと思う」(販売店スタッフ)。「悪天候なのに,Mac
OS 8.0並み,いやそれ以上の人出だ。用意した景品が足りなくなるかもしれない」。また,「iMac発売以来,マックが盛り上がっている。残業続きで,家族には評判が悪いが……」と,販売店スタッフは複雑な気持ちものぞかせる。
8.5滑り出し上々に原田社長相好を崩す
秋葉原の5店を回った原田社長は,雨にも負けず8.5を買い求めに来た熱心なユーザーを目の当たりにして,終始上機嫌だった。「iMac販売開始以来,注目度が高まっている。そこに,1万3800円で新しいマックに生まれ変わる新OSが登場したのだから,これだけの反応があったのだろう」と,原田社長。「(告知期間が2日しかなかったが)インターネットや新聞広告で,十分ユーザーにメッセージを伝えることができた。台風襲来で,深夜販売をやめようかと思ったが,決行してよかった。屋外ライブ・コンサートでも,雨降りの方が盛り上がるからね」と,趣味の音楽の話題を引き合いに出し,満足げに語った。
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