すっかり落ちこんでしまった千鶴は、勝負 にも身が入らないらしく、あっさりと俺に連 勝を許してしまった。  しかし、俺は素直に喜べない。 なんだか相手の弱みにつけこんでいるよう で、後味がよろしくないのだ。 「どうしてもナマリを治したいんだね?」  俺の質問に彼女はきっぱりとうなずいた。 「それなら方法はひとつしかない」  どんな時にも平常心を保ち、絶対に崩れる ことのない感情制御能力を身につけるのだ。 俺はデスクの上に千鶴を寝かせた。  かたわらにあった天気予報の原稿を持たせ て、読みあげるように言い渡す。  そうさせたうえで、おもむろにスーツの上 着のボタンへと手をかけた。 「きゃあっ!」 「気にしないで読まなくちゃだめだ」  悲鳴を上げて逃げようとした千鶴を、俺は 両手で押さえつけて言った。 「怒りや悲しみなんかよりも、恥ずかしさが 一番抑えつけにくい感情なんだよ」  それに敗北した以上、こういう目に合うの はあらかじめ知らされているはずだった。 千鶴は睫毛を震わせながらも、ついに覚悟 を決めて原稿を朗読し始めた。 「し、正午の天気予報のお時間です……」 よどみなく流れ出す無機的な声。  それをBGMにして、俺はゆっくりと千鶴の 上着のボタンを外しにかかる。 「まずは天気概況から。南の海上にある台風 18号がしだいに勢力を強めつつ北上を……」 下から上へ。予報内容に当てつけるように してボタンを外す。無言のままで千鶴の手を 交互に上げさせ、袖から腕を抜いていく。  清潔な白さのブラウスが目にまぶしい。 「さらにその南方には新たな低気圧が生じて おり、これも台風になる恐れが……っ!?」 タイトスカートに手をかけた途端、千鶴が すがるような目で俺の顔を見た。  視線で続けるように命じてホックを外す。 チキチキと音を立ててジッパーが下りる。  ストッキング越しのパンティの色も無地の 白のようだった。 ベージュのフィルターでぼかされた脚線美 のありさまが、なんともいえず色っぽい。 「こっ、これらは前線に生じる気圧の谷間の 影響によってさらに勢力を増すことが……」  胸の谷間、ブラウスのボタンに触れる。  糊のきいた布地のおかげでくっきりと強調 された胸の隆起の上を順々にたどっていく。  衣擦れの下からのぞく千鶴の素肌。  白桃のように瑞々しい乳房を覆うブラがの ぞいた時が、彼女の限界だった。 「あいやぁ、げーだこっちょおしぃ!!」 胸元を隠す千鶴の顔は真っ赤だった。  そして、すぐに青ざめる。 「あぁ、私ってばまた……」  反射的にまた津軽の言葉を使ってしまった と気づき、彼女はがっくり肩を落とすのだ。