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Appleのマルチメディア機能拡張「QiuckTime」が3.0にバージョンアップする。Appleは97年の春から盛んにQiuckTime 3.0のデモを行ってきたが，開発作業はやや遅れ気味（Peter Hoddie氏インタビュー参照）。現在の予定では，98年1月の「MACWORLD Expo/San Francisco」で，正式にデビューする見通しだ。

それに先立ち，Appleは「97年11月中には公開β版をWeb（http://www.QuickTime.apple.com/)で配布したい」（米Apple Computer社QuickTime担当Senior Prduct ManagerのMitchell Weinstock氏）考えである。

目玉はWindows環境への完全対応
親和性を上げるファイル形式を追加

QuickTime 3.0最大の目玉は「Windows環境との広範な互換性の提供」（Weinstock氏）である。3.0以降は，Windows版とマック版は同じバージョンが同時に出荷される。「両者は完全に同じ機能を使えるし，共通のファイルが扱えるし編集できる」（Weinstock氏）。このために，QuickTime 3.0のコードは完全に書き直され，マック版とWindows版は共通のコードで作られている。

Windows版のQuickTimeは2.1でバージョンが止まっている。マック版のQuickTimeはその後，2.5が登場し，マルチ・プロセッサー対応，MPEG再生機能やスプライト・ムービー機能，3Dオブジェクトへの対応といった機能追加を行っている。QuickTime 3.0の登場で，この格差をようやく是正する。

同時にWindows環境を含め，広く使われているファイル形式に対応した（表）。Windows標準のAVI（Audio/ Video Interleaved），AVIを拡張したOpenDML，米Avid Technology社の製品で使われているOMF（Open Media Framework）といったディジタル・ビデオ，米AutoDesk社が開発したFLC/FLIアニメーションといったファイルを扱える。もう1つ，Windowsとは直接関係ないが，DV（Digital Video）形式にも対応した。これらのファイルをすべて，QuickTimeで直接，再生／編集できる。

「直接」と書いたのは編集の際に元のデータが保持されるからだ。例えば，AVIフォーマットは同時に1つのオーディオ・トラックしか扱えない。AVIのファイルをQuickTimeで開いて編集すれば，さらに3種類のオーディオ・トラックを追加できる。しかも保存したときに，元のAVIファイルのデータは独立したトラックとして保持される仕組みになっている。「この結果，Windowsユーザーにとってもコンテンツの再利用がやりやすい」（Weinstock氏）。

また，QuickTimeの機能はすべてソフトで実現されているので，機能がハードウエアに依存しない，というメリットがある。

ビジュアル効果がリアルタイムで動作
インタラクティブ性を追加可能

Windows対応以外の目立つ機能追加としてビジュアル効果（Visual Effect）機能とDV対応が挙げられる。

ビジュアル効果は再生中のビデオに各種の特殊効果をかける機能。画像にフィルターをかけて面白い効果を出したり，2つのムービーをつなぐ場面転換に用いる。クロス・フェード，クロマキー（映像のマスク処理），SMPTEワイプ（注）といった標準的な効果は最初から内蔵されており，すぐに使える。また，API（Application Programing Interface，アプリがQuickTimeを利用するときの仕様）が公開されているので，独自のビジュアル効果を追加できる。

QuickTime 3.0のビジュアル効果はリアルタイムかつ非同期で動作するので，工夫次第でムービーにインタラクティブ性を追加できる。この図は「The Ripple（波紋）」と呼ばれるデモ。プールの波打つ水面をマウスでクリックすると，そこから波紋が広がる。プールの端からはQuickTimeのロゴが滑って来る。

これらは複数のビジュアル効果を組み合わせて作られている。背景はプールの静止画像。水面のエリアだけに「波」のビジュアル効果をかけてある。滑ってくるQuickTimeのロゴはベクトル・アニメーション。マウス・クリックを関知すると，そのポイントから「波紋」のビジュアル効果をスタートさせるわけだ。

QuickTime Plug-in 2.0を同時に提供
インターネットへの対応を強化

インターネットへの対応も抜かりない。QuickTime 3.0の登場と同時に「QuickTime Plug-in 2.0」が登場する。Netscape Navigator 2.0以降とMicro soft Internet Explorer 3.0（マック版は2.0）以降で動作する。

QuickTime Plug-in 2.0を使うと，QuickTime 3.0がサポートするすべてのメディアの再生がWebブラウザーで可能になる。これに加え，ムービー内にホット・ポイントを設定したりムービー自身に時系列でURLのリンクを埋め込める。ユーザーがムービーを再生すると，次々と別々のURLに，自動的にアクセスさせることができる。

●表　QuickTime 3.0で扱えるファイル形式（*が3.0の新機能）
ディジタル・ビデオ	オーディオ	静止画像
AVI*	AIFF/AIFC	QuickTimeイメージファイル
OpenDML*	WAV	Photoshop
OMF*	Sound Designer II*	QuickDrawピクチャ
MPEG	AU	BMP*
DVCam*	MPEG Layer 2	GIF
アニメーション	MIDI	JPEG/JFIF
FLC/FLI*	General MIDI	SGI
PICS	Karaoke MIDI	MacPaint
3DMF		PNG*

注）映像や放送などの関する規格標準化団体SMPTE（Society of Motion Picture & Television Engineers）が，標準的なトランジション・エフェクト（カット間をつなぐ時に使用する効果）としているもの。