2つの地図を同時に扱う妙味 Navin' You Ver.2.0レポート
[Wednesday, June 3, 1998]
Windows 95上で動くソニーの地図ソフト「Navin' You」がバージョンアップされたというので,試してみた。今回の最大の特徴は,Winの世界でデファクト・スタンダードの地図ソフト「プロアトラス」(アルプス社)上でカーナビができるようになったこと。さて,ナビゲーション能力の違いはどの程度あるのだろう。(日経BPクリエーティブ 大西 順雄)
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2ヵ月前に購入したソニーの地図情報ソフト「Navin' You」が5月22日にVer.2.0にバージョンアップした。発売は6月12日の予定(ソニーのニュースリリースはhttp://www.sony.co.jp/soj/CorporateInfo/News/199805/98-045/,およびhttp://vaio.sony.co.jp/software/参照)。前回のレポート(http://www.nikkeimac.com/editorial/nav/index.hts)以来,直接ソニーの開発者の方ともメールでやり取りができるようになり,いろいろ言いたいことも言わせてもらったが,そのいくつかはこのVer.2.0で実現されていた。まさか,意見が反映されたわけでもあるまいが,うれしい限りだ。
今回のバージョンアップの最大の目玉は,地図ソフト「プロアトラス」(アルプス社)上でカーナビができるようになったことだ。
プロアトラスで経路を表示しながらのカーナビゲーション。 Ver.2.0で可能になった
このソフトはWindowsの世界では標準の地図ソフトという位置づけになっている。情報量,見やすさなどが高く評価されているようだ。現在の東芝Librettoには標準で首都圏と大阪の地図が入っている(私のLibretto 60にはその1つ前世代のアトラスRDが入っていた。もちろん地図ソフト・フェチの筆者としては,プロアトラスの首都圏版はしっかり購入済みだった)。
インタフェースとして,地図上のポイントをダブルクリックすると,そこがセンターに来るという機能が付け加わった。これはズーミングをするとき,非常に便利な機能だ。Navin' You本来の性能としては,GPSアンテナでの衛星捕捉速度が大幅に向上したという。これについては,実際にやってみたが「劇的に速くなった」という感覚は残念ながらなかった。しかし,それほど不自由しているわけではなかったので,きっと別の機会には速さを体験できるだろうと期待している。
さて,本バージョンの売り物である「プロアトラス」との同時表示についてだが,地図ソフトとしてのNavin' Youの情報量不足をプロアトラスで補うことができるという点では意義深いものがある。
Navin' You付属のナビ研S規格の地図との比較。 情報量の差は歴然としている
なにしろ,Navin' Youは,全国の情報を1枚のCD-ROMで表示しようというのだから,情報量は自ずと限られる。その点,首都圏,名古屋,大阪などがそれぞれ1枚のCD-ROMで提供されるプロアトラスは,さすがに地図としての情報の密度でははるかに上だ。しかし早晩,DVDにも対応する必要が出てくるのだろう。そうなるとハード・ディスクに格納するという芸当はできなくなるのだろう。
GPSアンテナを使って現在位置を地図上で表示するソフトは,フリーウエアでも作られている(NIFTYのFGPSフォーラムを参照)。そこで最も一般的に使われる地図ソフトがプロアトラスである。Navin' You2.0では,その標準地図ソフト上で経路を表示しながらカーナビゲーションができるわけだから,さらに使い出があると思われた。
しかし,正直なところ,カーナビゲーションとしては,プロアトラスとの連動にそれほど魅力を感じなかった。それは,プロアトラスはNavin' Youの売り物である無段階ズームに対応していないのが最大の要因だ。
前回のレポートで,Navin' Youが何万分の1といったこれまでの地図の概念を抜け出しているのがすばらしいと書いた。しかしプロアトラスはこの何万分の1という地図の世界のソフトなので,中間の倍率では文字や線分が拡大してぼけてしまったような表示になる。これでも地図としての役割は果たしているので,OKということもできる。実際,Navin' Youより情報量が多い場合がほとんどだ。もちろん,倍率がちょうどの場合の情報量は満足のいくものだ。Navin' You側に何万分の1にするかというボタンやメニューがあると,より使いやすいのだが。
ほかに揚げ足をとるとすると,プロアトラス上でカーナビをすると,経路の黄色い線が点滅する。マシンの処理能力のせいだろう。これも実際は気にならないことも多い。また,ガソリンスタンドや公園といった追加情報が,プロアトラス上では表示されないのも残念だ。
2つの地図を連動させる妙味
Navin' You付属のナビ研S規格の地図と,プロアトラスが両方使えるメリットはいくつもある。一つは,いかにも普通の地図とカーナビの地図を連動して使うことでより深い情報が得られることだ。たとえば,実際走行している街の住所を知りたいと思っても,ナビ研ソフトは表示していない。しかし,プロアトラスは表示している,といった具合。
プロアトラスとナビ研S規格地図を同時に表示。 「連動モード」を使うとダブルクリックで両方が同じ位置を表示する
二つ目は,地名検索がプロアトラスの方がやりやすいので,プロアトラス側で検索しておいて,同じ場所をナビ研地図でも表示させられる。なにしろナビ研側はIISというカーナビ標準の検索システムしか持っいないため,検索したい住所の入力には専用の画面上のソフト・キーボードでいちいちボタンを押す必要がある。プロアトラスは,通常の日本語入力が可能だ。その分,使いやすい。
両地図ソフトの検索の違い。 プロアトラスは通常の仮名漢字変換が使えて便利
ただし,私のLibretto 60はお出かけパック(CD-ROMから地図情報を切り出してハード・ディスクに格納したもの)の容量をさらに増やして約580MB使う羽目になったため,プロアトラスをフルインストールする余裕がなくなってしまった。しかし,カーナビとしては全国をカバーしていることが結構重要なので,プロアトラスの首都圏の一部のみのインストールにとめようと思っている。
また,640×480ドット表示のLibretto 60では,ナビゲーションのウインドウがちょうど半分を占める(リサイズもできない)ので,残りの部分に2つの地図を並べて表示するのは現実的ではなかった。これは,Libretto所持者としては我慢するしかない。上位のマシンがうらやましい。
その後,あちこち走った感想を若干追加する。まず,やはりGPSだけという限界で,首都高速などで地下に潜ったり立体交差したり,また一般道路走行中に高架下を走っているような場合に衛星を捕捉しきれなくなってルート再探索を始めることがある。また,気持ちいい並木道の木陰などを走っていても,衛星を捕捉できなくなることが多い。仕様だから仕方ないが,100%ソフトに頼った走行はできないようだ。
さて,ソニーによるとNavin' Youのマック版の開発予定はないのだそうだ。ならば,ますますPCエミュレーターを使ってこのソフトがどの程度使えるのかを試してみたい。前のレポートを読んでいただいた方からも数名,リクエストが来ている。現在,日経MAC編集部に機材の準備をしてもらっている段階だ。本誌のモデルチェンジや新製品ラッシュで,なかなか動いてもらえないらしい。ただし,PCエミュレーター上での評価は,本誌上に掲載してくれるようなので,お楽しみに。
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