Back to Home
T o p
記者の目
記者の目

ホット・ニュース
ホット・ニュース

バイヤーズ・ガイド
バイヤーズ・ガイド

インターネット広場
インターネット広場

日経MACレポート
日経MACレポート

記者の目
記者の目

日経MACから
日経MACから


Nikkei MAC CD目次
Nikkei MAC CD目次

NIKKEIMAC.COM
NIKKEIMAC.COM

日経BP社 BizTech
日経BP社 BizTech

いままさに立ち上がろうとしている
地方のインターネット利用

[Tuesday, February 10, 1998 松浦 晋=日経MAC]

一週間をかけて日本の北半分を回り、先週末に東京に帰ってきた。

この一週間,取材して,夜中までかけて記事を書き,ローカル線を乗り継いで移動して,さらには持っていったモバイル機器のテストをして,と非常に忙しかった。しかしそれだけのことはあったと思っている。たった3件の取材ではあったが,以下,これまでの取材をまとめてみたい。

立ち上がりつつある地方のインターネット利用

まず,はっきり言えるのは,どうやら日本の地方におけるインターネット利用は,昨年末から今年にかけて急速に立ち上がりつつあるらしいということだ。東京では,昨年秋以降「インターネット・ブームは終わった」という雰囲気もある。その一方,地方ではインターネットへの取り組みが今まさに本格化しつつあるのだ。取材した3つの取り組みはすべて,1996年後半に活動を開始し,1997年末から本格化するという経緯を経ている。

思い出せば,東京で記者をしている自分がインターネットを初めて使ったのは1994年の初夏だった。当時はまだ日本全国で両手の指で足りるほどのWebサーバーしか稼働していなかった。これは日本でも早い方に入ると言っていいだろう。つまり東京と地方では,インターネットへの取り組みにおよそ1年半から2年程度のタイムラグがあるということになる。

このことの意味は大きい。つまり以前の情報環境では,地方は東京と比べて定常的に2年も遅れていたということを意味するからだ。このようなタイムラグはインターネットによりなくなるはずだ。そのことによって地方がどのように変化するか——1998年は,まさに今後の地方のあり方を占う年になることは間違いない。

地方自治体の自覚が利用推進の分かれ目

第2に重要なのは,地方がインターネットに取り組むにあたって,地方自治体の姿勢が大きな意味を持つと言うことだ。町自らがプロバイダーになった標茶町はもちろんのこと,秋田のきたうら花ねっとにしても安曇村にしても地域の自治体を巻き込んで運動を展開している。

逆に言えば感度の悪い自治体では未だ旧態依然とした議論の堂々めぐりが続いていることが容易に想像できる。早く気が付いた自治体がいち早く情報化して,取り組みの遅れた自治体は,ずっと後塵を拝する——インターネットによって新たな地域間格差が発生するかもしれない。しかしこの格差は場所や地形といった逃れられない条件から発生するのではなく,自治体のトップの能力如何で決まるものだ。この意味においてインターネットは,地方自治体の間にも競争原理を導入しつつあるのだ。

結局は人材が決め手

最後に,どの取材例も,核となる人材がいて初めてインターネットへの取り組みが本格化していた,ということに注目したい。良い例が秋田県南日々新聞の伊藤正雄さんだ。まず,誰か一人が気が付いて運動を始め,徐々に周囲を巻き込んでいくのである。これまでありがちだった「みんな一緒」の横並びの発想とは異なる部分から動きが発生している。

さらに面白いことに,インターネットを通じてこれら自分から動き出した人々が出会い,協力しあうようになるという現象も起きている。伊藤さんがきたうら花ねっとと出会い,その花ねっとに甲山知苗さんが参加するというように,まさにインターネットによって意欲を持つ人々がネットワーキングされていくのだ。これまでの町おこし・村おこし運動は非常に限られた人たちの孤軍奮闘によって支えられていたのと対照的である。今後に大いに希望がもてる展開だと言えるだろう。

皆さんからいただいた疑問について

最後に連載中に読者から頂いた疑問2つに答えておきたい。

・地方のプロバイダーはOCN,ODNのような大規模プロバイダーをどう考えているのか

この件に関してはどこでも,「いずれ大規模プロバイダーがやってくるにしても,日本全国展開の最後になるだろう。それまで情報過疎のまま放置されるぐらいならば少しでも早くインターネットにつながりたい」というのが,プロバイダー事業展開の重要な動機となっていた。その底には「いつだって過疎地に手がさしのべられるのは最後だし」というクールな見切りと,「このまま放置されたら,ますます遅れていってしまう」という危機感が見て取れる。中には「OCNがやって来たなら,我々はプロバイダー事業をやめてもいいんです」という人もいた。

・小学生にまでメールアドレスを渡すのはいかがなものか。子どもがネット犯罪に巻き込まれたらどうするのか

この件については記者の私見として答えたい。

どのようなことにもプラスとマイナスがある。問題はマイナス点が我々にとって受忍可能かどうかということだ。我々は「毎年1万人もの死者を出すから自動車を使うのをやめよう」とは考えない。同じことがインターネットについても言えるのではないだろうか。インターネットは今や必要不可欠の社会的インフラストラクチャーとなりつつある。だから今必要なのは,マイナス面にだけ目を向けて子どもをインターネットから遠ざけることではなく,マイナス面も理解した上で賢くインターネットを使いこなすための教育をすることではないだろうか。記者はそう考える。

※次のシリーズは2月16日からの週に連載する予定です。


訂正

安曇村の岩田健二さんから,第3回の記事について以下の訂正の申し込みを受けました。以下の点について当該記事を訂正すると同時に,お詫びいたします。

(誤) 最初にこの計画に参加した18軒のペンションでは全ての客室に10BASE-Tのさし込み口が設置され,客は電話料金を気にすることなく時間無制限でインターネットを使用することができる。

(正) 最初にこの計画に参加したのはペンション,学校,村役場など18施設。特にペンションでは全ての客室に10BASE-Tのさし込み口が設置され,客は電話料金を気にすることなく時間無制限でインターネットを使用することができる。

(誤) 岩田さんの現在の肩書きは安曇村役場総務課の職員。

(正) 岩田さんの現在の肩書きは安曇村役場総務課の嘱託。

(誤) バブル経済最盛期には年間14億円あった年間の観光収入は,半分の7億円にまで減った。

(正) バブル経済最盛期には年間14億円あった年間のスキー場の収入は,半分の7億円にまで減った。

(誤) その中で銀山荘の収支は,最盛期の水準を保ち続けた。

(正) その中で銀山荘の収支は,対前年比で増収となった。

(誤) それでも興味をしめしたオーナー達に岩田さんは2つのことを要求した。まず自分のメールアドレスを持つこと,そして自分のホームページを持つこと。必要ならば他のペンションのホームページ作成も行った。

(正) それでも興味をしめしたオーナー達に岩田さんは2つのことを要求した。まず自分のメールアドレスを持つこと,そして自分でメールに返事を出すこと。最初は各ペンションのホームページ作成は岩田さんが代行した。

(誤) 1997年10月,村も巻き込んで任意団体の「安曇村インターネット協議会」が発足した。

(正)1997年10月,村も巻き込んで任意団体の「安曇村サイバー・ネットワーク」が発足した。


※この記事のご感想を,smatsu@rr.iij4u.or.jp(松浦)までお寄せください

【インターネットを歩く】ホームページに戻る

■

日経BP社 Copyright 1993-1998 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.
This page was last updated on Wed, Apr 15, 1998 at 8:46:37 PM.
Site Developed by Rei Watanabe