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次のMac OS 8.5も素晴らしい! 9月にも姿を表わす次期OSを緊急レポート [Tuesday, May 19, 1998 編集長,林 伸夫=日経MAC] WWDC(Worldwide Developers Conference: 世界開発者会議)はマック向けに開発を行う開発者向けの会合だ。 2000年に間に合って次のOSの開発を進めるにはどうすればいいのか,ということよりも,私たちエンド・ユーザーには今使っているこのマックがどう使いやすくなるのかのほうが大切だ。 9月にも姿を表わすという次のMac OS 8.5はどうなるのか,レポートする。
ここサンノゼのWWDC(Worldwide Developers Conference: 世界開発者会議)で遠い未来の華やかな話しにかき消されてしまった感のある次期Mac OSの話をお伝えしておきたい。エンド・ユーザーの私たちにとっては何年も先にどうなるかということよりも,目の前のマックがどう使いやすくなるのかの方が大切だ。 Rhapsody,Yellow Box,Carbon,Mac OS X(テン)……。サンノゼで次々と花火が上がっているが,そうした新しい技術が私たち一般ユーザーの手に届くのは,99年の後半だ。こうした動きは日常の仕事の中でマックを使っている人にはほとんど無関係と言えるだろう。 世界を駆け巡るニュースに苦々しい思いを抱いておられるユーザーもきっと多いことだろう。 これまでMac OS 8.1の次にはAllegroという開発コードで呼ばれるMac OS 8.2があるのではないかと噂されていた。しかし,米Apple Computer社Steve Jobs暫定CEOがキーノートで明らかにしたことによると,期待のAllegroは9月にMac OS 8.5という正式名称となって出荷する予定だという。 8.1の次は8.5となることが公式にアナウンスされたことになる。さらにその後もMac OSには改良が加えられ,99年の第1四半期にMac OS 8.6が出てくることになる。さらにその先はSonata。99年第3四半期に発表される予定だ。 さて,そのMac OS 8.5。最も大きなメリットはスピード面での改善だろう。 WWDCセッションの中でちらりと行われたデモで,聴衆を最もアッと言わせたのは,ネットワーク越しのコピーのスピードだ。用意した1MBのファイルをネットワークの向こうにあるAppleShare サーバーにコピーして見せたが,まさに一瞬。ちょっと目を離している隙に終わってしまうほどの速さだ。(写真をお見せできないのは,そのためです) ネットワークの配線は,今後マックの標準ともなる100BASE-T。これまでもマックに100BASE-Tを使うことも可能だったが,その性能を十分に発揮できていなかった。10BASE-T配線をしたときに比べ,速度的に15%程度しか,速くならなかったのだ。要するにMac OSの中に組み込まれたネットワークのためのコンポーネントが10BASE-Tをちょっと超える程度のパフォーマンスしか出し得なかったのだ。 8.5からはこれが劇的に改善される。100BASE-Tが持つ本来の性能,すなわち秒10MB程度の性能が出せるよう改良が加えられたという。 これは大きなデータを使うことの多い,DTPユーザーやグラフィックス・デザイン,ビデオなどのクリエイターにとっては実に嬉しいことである。 これまで古い68k向けのコードで記述された部分のほとんどがPowerPCネイティブになったこと,ネットワークの通信をつかさどるドライバー部分を最適化したことなどが貢献している。 PowerPCネイティブになったことで,当然Finderの動作,文字や画像ファイルの表示などもさらにきびきびした動きになる。 もう一つ大きな改善点は,多くのシステム機能拡張がExtensionという形ではなく,システム本体の中に埋め込まれたことだ。たとえば,現在機能拡張フォルダの中にあるWorldScript IIは最初からSystemの中に組み込まれたから,英語版のシステムでも日本語のファイルを開き,日本語で読むことができる。 肝心のフォントがなければどうすることもできないはずだが,これも心配ご無用。英語版のMac OS 8.5にも「Osaka」と「Osaka−等幅」フォントが同梱される。 ただし,日本語フォントはカスタム・インストールしなければならないから,すべてのマックで日本語表示できるようになるわけではない。 こうなると何が良くなるか。 従来日本語のメールを海外のユーザーに送る場合は,さまざまな困難があった。相手が英語のシステムを使っているときには,そのままでは文章が文字化けし読めないので,Japanese Language Kit(JLK)という日本語化の仕組みを導入しなければならなかった。これが解消される。ただし,この機能は読むだけ,なので,ちゃんと日本語の文章をかきたいというときは仮名漢字変換機能を持ったJLKが必要になる。 日本のユーザーにも恩恵がある。 たとえば,現在,新しいソフトをインストールした途端,システムが立ち上がらなくなったとしよう。解決策はまず「shift」キーを押し下げながらシステムを立ち上げ,原因を究明するのがまず第1歩だ。しかし,デスクトップ内のファイル名,プルダウンメニュー内のコマンドがすべて文字化けし,読めないのが不便で仕方なかったのではないだろうか。 「shift」キーを押し下げながらシステムを立ち上げたときも文字化けせずに日本語が読めるのは大きな改善点だ。なぜ,今までそんなことができなかったか,逆に疑問も残るが,なにはともあれ,ここは大拍手だ。 機能拡張ファイルをどんどんシステムに内蔵させようとしているのは,Mac OS Xへの移行準備が始まったからと考えていいだろう。Mac OS Xになったとき,プリエンプティブ・マルチタスク,メモリー・プロテクションなどのモダンOSの機能をフルに使いたい場合には新しく作られるCarbonというOS環境の上に移行する必要がある。このときに機能拡張類は働かなくなるからだ。 「劇的」が続くが,ファイルの「オープン」,「保存」も劇的に改善された。 これまで,21インチの大型画面の中に小さなファイル・ダイアログ・ボックスが開くだけの使いにくいものだったが,数々の改良が加えられた。写真のようにサイズも変更可だ。さらにファイル作成日付,容量などの情報が表示でき,並べ替えもできるようになった。 このダイアログ・ボックスは従来,画面を独り占めしていて,別の作業が全くできないのが実に不便だった。たとえば,ファイル選択の操作中に,サーバー内にファイルがあるのを思い出してサーバーをマウントしたいと思っても,手も足も出なかった。これが,通常のウインドウと同じく,裏に回して,別の作業をすることができるようになった。
フォルダ・オープン,保存のダイアログ・ボックスをリサイズしているところ,ご覧のように日付表示,容量表示,階層構造表示などがこの中でできるようになった。
よく使うフォルダ,文書ファイルなどはブックマークとして登録しておけるようになった。Mac OS 8になってファイル・アクセスを簡略化する「Super Boomerang」(米Qualcomm社製のユーティリティー集「Now Utilities」に含まれる)が使えなくなって困っているというユーザーが多いようだが,これで,解決になりそうだ
ファイルのオープン,保存先は従来マウントされたローカルのハード・ディスクかAppleShareサーバーのみだったが,8.5からはインターネットへも広がった。 これで,インターネットのどこかに保存されているファイルにも読み書きができるようになった。もちろん,相手システムに書き込み権限があればの話だが。
URLを指定すると,Web上のデータやFTPサイトのデータにアクセスできる。写真はhttp://でデータにアクセスするところ。
「ファイル検索」も劇的に機能強化された。これまでのように単語を入力してファイルを探し出すことに加えて,普通の文章の形で検索条件を指定することができるようになった。 さらに文章中に含まれる語句を対象に高速で検索するための仕組み,「V-Twin」も組み込まれた。V-Twinはハード・ディスクなどの中に収められたデータを単語ごとにインデックス化し,高速で検索できるようにするものだ。"The lowest price Macintosh sold in Japan"といった形で検索を掛けると,一瞬のうちに,要求に近そうなものを確度順にリスト表示してくれる。 こうしたV-Twinの機能はファイルの中にある単語を切り出して索引を作るところから始まる。この切り出しは英語なら簡単だ。半角スペースなどが単語の明確な区切りとして存在するからだ。 しかし,日本語の場合は難しい。漢字かな交じり文はただ一連の文字コードの羅列でしかない。この中で,どれが単語かを抽出するには仮名漢字変換ソフトなどで使っている文節の切り出し機能を発展させた「Language Analysis Architecture」(形態素分析)」機能を使うなどの方法をとらなければならない。 「ことえり2.0」にひそかに組み込まれたこの機能がV-Twinエンジンとうまく組み合わされ,日本語でも文中の語句検索が超高速でできるようになった。この新機能は日本語版のMac OS 8.5で実現される。
文書ファイルの文中に含まれる語句を探しだし,リストアップしたところ。一瞬でリストが表示される
日本語の「Language Analysis Architecture」(形態素解析)機能について技術的な説明をする Architect and Manager OS Engineering TokyoのYasuo Kida(中央),International Technology Solutions, Worldwide DeveloperのMerle Tenney(左),そしてPartnership Manager, Japan/Worldwide Developer RelationsのFumi Ueda(左)の各氏。
「ファイル検索」機能はもはやハード・ディスクの中の文書ファイルを探すだけのものではない。 インターネットのWebページ,FTPサイトなどにある情報まで探しだせるよう工夫が凝らされた。Webページへの情報参照はあらかじめ登録しておいたWeb上の検索エンジンを参照して結果をリストアップしてくれる。 スピードも劇的に改善された。 AppleScriptも新しくなる。プログラム解析,実行部分がこれまで68Kコードで書かれていたために,動作が緩慢で,ユーザーの不満が高まっていた。新しいAppleScriptは1.3となりフルPowerPCネイティブとなる。これにより,これまた劇的なスピードアップが得られる。 どの程度のスピードアップが得られるかは,プログラミングの内容によるから一概には言えないが3倍から10倍は速くなるだろう。 Finder上でフォルやファイルを扱う仕組みが大幅に強化された。サーバーからファイルをコピーしたり,移動するなどの動作が簡単に記述できるようになった。 ただし,今回のバージョンアップの中に日本語によるプログラミング機能は省かれた。従来通り使えるように機能は残してあるが,新しい拡張には対応しない。日本語でのプログラミングが本当に有効に機能しなかったし,実際にコーディングすると,読みにくく,分かりにくい構文にしかならなかったためだ。 また,今後,レコーディング機能もこれ以上は改良されない。当然のことながら,アルゴリズムのレコーディングができないことを始め,レコーディングしても結局はいいコードが生成されないなど不満が残ることになったからだ。 中で扱うコードはUnicodeサポートとなる。 ヘルプ機能はHTML形式のファイルも利用できるようになった。これで社内の独自開発システムなどにも簡単にヘルプ・ガイドを付加することができるようになった。 コントロールパネル類のほとんどは単独のアプリケーションとなった。これで従来以上の安定性が確保できるし,不要な場合にはロードしない,あるいはクイットするという選択がいつでもできるようになった。メモリーの節約にも貢献する。 グラフィックスの表示スピードが改善された。特にPowerMacの7300, 7500, 7600, 8500, 8600シリーズで速度向上が望める。 QuickDrawそのものの完全な書き直しも画面表示の高速化に貢献している。全体に10%以上の高速化が期待できそうだ。フォント表示機能にはぎざぎざをなくすアンチエイリアス機能が組み込まれた。 Windows NTサーバーに接続する機能はかなり改善された。 もう一つ,さまざまなニュースに隠れて報道されなかった面白い仕組みがある。 8.5にはデスクトップの表現感覚を変える仕組みが追加される。 ビジネスでバリバリ使うときにはシャープなイメージで,幼稚園のお遊び室に置くマックは親しみやすい,楽しい飾りがたくさんついたデスクトップにしておこうというわけだ。 その中で,こんなおしゃれなデスクトップが追加される。インダストリアル・デザイナーがアイデアを書き留めておくスケッチがそのままデスクトップになった感じだ。 Steve Jobs氏にプレゼンされたさまざまなデスクトップ・テーマの中で「使えるのはこれ一つだ!」と言わしめた作品だ。 日本のデザイナーが設計し,8.5で採用されることとなった。
Drawing Boardと名付けられた新しいデスクトップ・テーマ。スケッチブックに制作イメージをさらさらっと描いたような感覚。リサイズボックスなどはデザイン途中のアイデアをスケッチした感じだ。
これらの改良はまだ,開発進行中だ。今後の開発でさらに機能が追加されたり,方向が変わってしまうものもある。ベータ版が手に入り次第,さらに細かくレポートしていくつもりだ。 |
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