ネグリジェの少女の周囲は霧がかかったようにもやがかかっていて、薄暗い。月明かりの夜の湖畔のようなその場所には、肌寒い風がわずかに吹いていた。そして彼女の目の前には、自分と同じ顔をした少女が立っていた。
「あなた・・・だれ?」
鏡の前で向かい合わせに立っているように、二人が同じ言葉で相手に尋ねる。
「あなたこそだれ?」
一人の少女はおびえた表情で再び尋ねる。もう一人はわずかに笑みを浮かべた。
「あなたは1人じゃない。私は・・・・・・。」
「レイア、レイア・・・・・・・・・レイア。」
誰かがおびえる彼女の名前を呼ぶ。何かを言おうとした少女は、次第にぼんやりと姿が薄れていき、やがて完全に姿が消えた。
「いまのは・・・・いったい。」
そう呟いたとき、彼女の目の前が急に明るくなった。
「いつまで寝ているの!いくら学校を卒業したからって、遅くまで寝ているんじゃありません!」
「・・・あれぇ・・・・夢か・・・・また同じ夢だわ。」
母親の叫び声で目を覚ました少女は、かろうじて瞼を開き、周囲を確認した。自分の寝室だった。去年立て直したばかりの木造の家だったが、間違いはない。
「だれかこの部屋にいなかった?」
眠い目を擦りながら母親に尋ねる。
「・・・・・あなた、まだ頭の中は寝てるんじゃないの?しっかりしなさいよ。家には幽霊なんてでないわ。」
母親は半ばあきらめたような口調で少女の質問に答えた。
「やっぱり・・・・夢か・・・。」
少女はベットから起き上がり、眠気を取るために洗面所に向かった。
「まったく・・・・あんな状態で社会人になれるのかねぇ・・・・。」
母親は部屋を後にする少女の背中を見ながら、不安そうに呟いた。
「あっ、私、レイアよ。元気だった?」
レイアは顔を洗い、パジャマから身軽な普段着に着替えると、早速学校時代の友人の家に電話していた。学校時代といっても、まだ今月上旬に卒業したばかりだ。
(あらレイア、お久しぶりね!元気だった?)
電話の相手はハスキーな声で元気よくこたえた。
「もちろん・・・・といいたいところだけど・・・最近変な夢をよく見るのよ。」
(欲求不満なんじゃないの?)
「なんでそうなるのよ!そんなことないわよ!」
(どうだかぁ・・・・あっ、そうそう、明日ヘキルノに買い物に行くんだけど、あなたもいっしょにいかない?)
「うん、いいわ。じゃ、明日の9時に駅前に。まーた、こないだみたいに自動改札機と喧嘩しないでね。」
「・・・・わかってるわよ!・・・・いいわ。じゃ、明日の9時に駅前に。」
(じゃ9時に。じゃねぇーぇ。プチ)
電話はそこで切れた。レイアは受話器を置くと、まだきれいにとかしていない髪をかきあげ、自分の部屋に戻った。
「あっ!肝心なこと聞くの忘れたわ。・・・・・・ま、明日聞くからいいや。」
自分の部屋の入口で一人納得すると、部屋に入り、机の前の椅子に腰かけた。
「さってと・・・来週から仕事かぁ・・・どうせなら通訳とかの機械なんか触れないで済む仕事のほうが良いんだけどなぁ。とりあえず恥じかかないように情報パネルだけは使えるようにしておかなきゃ。」
彼女はこの世の中でもっとも苦手としている、機械の操作説明書を広げて頭を抱えだした。レイアは容姿端麗、スポーツ万能頭脳明晰・・・・が、そんな彼女にもただ1つのウイークポイントとして『機械音痴』というものがあった。機械の理論について完璧でも、なぜか操作は上手くいかない場合が多い。本人いわく「機械が私に逆らって行動するのよ!」とのことだ。先々週も駅の自動改札を壊して駅員と喧嘩したばかりだった。
「ねえレイア・・・ちょっといいかな?」
「なーにネット。今忙しいから簡潔にねぇ。」
レイアは声のした方向へ振り返らずに言葉を返した。実際には操作説明書を枕に居眠りを始めようとしているところだった。
「真面目に聞いてよ!夢のことだよ!」
「えっ!夢?!・・・なんであんたがそんな事知ってるのよ?」
レイアは勢いよく振り返り尋ねた。レイアの前には一匹の犬が----正確には犬ではないのかもしれないが----座っていた。声はその犬からのものだった。
「何寝ぼけてるんだよぉ、一昨日も変な夢見たって自分で言ってたじゃないか!昨日もうなされてたみたいだし。」
「そうだったっけ?」
レイアが天井を見ながら考え込んでいると、ネットは話を続けた。
「で、レイアが見た夢なんだけどね、あれは・・・・・・・」
ネットが途中まで言いかけたとき、ドアをノックする音がした。
「はーい。どうぞぉ。」
ドアから顔を出したのは、深刻な顔をした母親だった。
「ちょっと居間にいらっしゃい。」
「いますぐ?」
「そう、いますぐ。」
母親はそれだけ言うと、ドアを開けたまま居間のほうへ歩いていった。
「なにかしら?・・・なんか深刻そうな顔をしていたけど・・・・。ネット、悪いけど話の続きは戻ってきたらね。」
「・・・・・わかった。」
レイアがすまなさそうに言うと、少しふてくされたよな表情をした。
「そんな顔しないの!じゃ、また後でね。」
ネットを部屋に残し、レイアは2階の居間に向かった。
居間は20畳程度の広さで、クリーム色の絨毯が引きつめられ、サイドボードやソファーが置かれている。照明もごく普通のさほど派手ではないシャンデリアに数個の間接照明といたってシンプルな部屋だ。広い窓からは恒星ツーラの光が射し込んでいる。ソファにはレイアの父ジャック・ライカーが腰を下ろしていた。その後ろに妻、つまりレイアの母親のノーマが立っていた。
「さて、レイア。まあ、そこに座りなさい。」
ジャックは微笑みながら、持っていたコーヒーカップをテーブルにそっと置いた。ジャックはこのマーリス町の町長だった。マーリスはアンガムの国の最も南に位置する農業を主産業とした小さな町だ。
「なーに?改まって。あっ、ひょっとして社会人になるお祝いに何か素敵なプレゼントでもしてくれるとか?!」
レイアは両親の重苦しい空気を感じつつも、陽気に振る舞った。だが、それもむなしい努力に終わった。ノーマがジャックのとなりに座わり寂しそうな顔でレイアを見つめた。
「実は・・・・・・おまえに話さなければならないことがあるんだ。」
ジャックはレイアから視線を逸らし、窓の外の緑が眩しい庭をぼんやりと眺めながら言った。
「なーに?・・・・・な、なんか二人とも・・・・とーーっても暗いわよ。」
「・・・・・・・。」
二人とも表情を変えずに黙っている。空気が更に重くなり、息苦しいくらいになった。
「なによ、そんな世界が終わっちゃうような顔をして・・・・。」
少し不安そうな顔をして、再びレイアが尋ねた。
「実はな・・・・・。」
(チリリリリ、チリリリリ・・・・)
長い間を取ってからジャックが再び口を開いたとき、サイドボードの上にあった黒い電話のベルが鳴り出した。ノーマが立ち上がって受話器を取った。
「はい、もしもし・・・・・・・えっ!はい、はい。少々お待ちくださいませ。・・・あなた。」
ノーマは受話器をジャックに差し出した。ジャックはノーマの態度に顔色を変え、すばやく受話器を取った。
「もしもし、私だ・・・・・・なに!・・・わかった。すぐに対応してくれ。私もそちらに向かう。」
ジャックはそれでけ言うと、受話器を叩き付けるように置いた。
「レイア、すまんが話の続きは後でにしよう。すぐに避難の準備をしなさい。ノーマ、おまえもだ。」
「何があったの?!」
ノーマが難しい顔をしているジャックを見ながら尋ねた。
「ゾームというのはおまえも知っているだろう?」
「ええ、あのカータオンを電撃的に占領した謎の軍隊のことね。」
「そいつらが、この町を攻撃している。」
「何ですって!」
レイアは飛び上がって叫んだ。
「今は警察や駐留部隊が防戦しているが、奇襲のために混乱している。何が目的か知らんが、とにかく住民を避難させなければならない。おまえ達もすぐに避難場所へ向かえ。」
「わかったわ。お母さん。」
「うん。」
ジャックはすばやく上着をはおると、すごい勢いで家を出ていった。レイアの胸に言葉では言い表せない、これまでにない不吉な予感が浮かんでいた。
先月、アラミスの東の大陸にあるカータオン共和国が、ゾームという謎の軍隊によって3日で占領された。昆虫のような多数の兵器であっという間に占領さたのだ。元々友好関係のあったアリステアも援軍を送ろうとしたが、ことごとく撃退された。今月に入ってからはアリステアの東の地域にゾームの大軍が押し寄せ、今はブラウトーン要塞という前世紀時からあった要塞のところまで進撃している。アンガムはカータオンからかなり離れたところに位置しているので、そう簡単には近づけないと思われていた。
レイア達は、すぐに着替え、最小限の身の回りのもの持つと避難場所へ向かった。
「しばらく避難訓練なんてやっていなかったからなぁ。」
レイアは石畳の歩道を歩きながら呟いた。
「あんた、緊張感がまるでないわね。」
ノーマはあきれている。
「緊張感がないって言われても・・・だって、本当に緊張してないしぃ。」
「はいはい・・・・あら?」
ノーマが前方に何かを見つけた。何やら大きな機械のようだった。周りにも紫色の鎧のようなものをきた連中が蠢いていた。
「ねえ、お母さん、何だと思う?」
「・・・・・さっき言っていた敵じゃないの?」
二人がこそこそ建物の影で噂話状態になっていると、その紫色の鎧の1つが気づいてこちらに歩いてきた。
「な、なんか・・・・こっちにくるような気がするんだけど・・。」
「なーにのんきなこと言ってるの!レイア!逃げるのよ!」
ノーマはレイアの耳元で大声を上げると、それに抗議しようとしたレイアの右腕を乱暴に掴み、元来た方向へ走り出した。
「ああーっ、まってよぉ。」
ネットも慌てて後を追った。
「状況はどうですか?」
ジャックは町役場の隣にある軍の駐留部隊の司令部にやってきた。駐留部隊といっても田舎の農村のような場所であるから1個中隊程度の部隊がいるだけだ。周辺の警備や災害発生時の救助活動などのためにいる部隊で大した武器は装備していない。
「敵襲は小規模です。ここを占領するような意志は認められません。現在のところ警察、消防、変電所、駅が攻撃を受けましたが、何れの場所もすぐに撤退しました。変電所を破壊されたため、町内の90%が停電しています。現在、第1小隊が敵を追撃中です。」
若い駐留軍司令官が町長の質問に答えた。
「病院は?」
「病院は非常用のソーラーバッテリーがありますから大丈夫です。しかし、妙です。攻撃の必要性が感じられません。」
司令官が首をかしげる。
「というと?」
「つまり・・・・何か他の目的のために注意を逸らすための囮ではないかとおもうのですが。」
「なるほど・・・・・・・・・・・・・・・・・!まっ、まさか!」
ジャックの次の行動は家へ電話をかけることだった。
「そ、そんなに引っ張らないでよぉ・・・。」
レイアの言うことも聞かず、ノーマは全力で走る。レイアもそれに合わせて走った。だが、みるみる追手は追いついてくる。
「あーん、追いつかれるぅ!どうしよう!」
「いいから走りなさいぃ!」
レイアとノーマは歩道の端にある立て看板や電気バイクなどをなぎ倒しながら懸命に走った。
「あっーっ!スカート破れたぁ!これお気に入りだったのにぃ。パンツみえちゃうぅ。」
レイアが半べそになりながら叫ぶ。ノーマは既に話ができる状況ではなく、大きな口を開けて懸命に酸素を吸い込みながら走っていた。と、ノーマが歩道の継ぎ目に足を取られて派手に転んだ。
「きゃぁ!」
「あっ、お母さん!・・・何やってんのよぉ。」
「仕方がないでしょ、あんたほど若くないんだから!それに・・・・パンツなんていわないでちゃんとショーツっていいなさい。女の子でしょ。」
「どっちだっていいわよ!それどころではなくてっ!」
ノーマが服の埃を払いながら立ち上がると、既に、紫色の不気味な昆虫のような鎧を着た連中が取り囲んでいた。
「な、なんか・・・・いやーんな雰囲気。」
「・・・・・・そうね。」
レイアとノーマは互いに背中を合わせて相手の様子を見る。じりじりと包囲の輪が狭まる。ネットが威嚇しているが、まるで効果がない。
「くぉらぁーぁ!てめーら!女をよってたかっていじめてるんじゃねぇーキーク!」
何やら叫び声がした方向から男が飛んできて1つの鎧に飛び蹴りを食らわせた。食らったものは派手に吹き飛んで、そのまま道沿いのパン屋のショーウィンドウに突っ込んだ。男はレイアと同じくらいの歳の青年だ。赤を基調とした軍服に黄緑っぽい色のマントを羽織っている。
「・・・もったいなーぁい。」
ノーマがぐしゃぐしゃになってガラスの破片まみれのパンを見ながら呟いた。
「何のんきなこと言ってるのよ!」
レイアが叫ぶ。青年は振り向きざまに腰のサーベルをぬいて振り向きざま、別のもう一体に切り付けた。切られた鎧は火花を散らして崩れ落ちた。別の鎧が彼を切り付けようとしたが、再び振り向きざま首の部分を切り落とした。
「後3体、楽勝だぜ。」
青年がサーベルを持ち直そうとしたとき、3体同時に彼を襲った。
「わー、待った待った!3対1なんて卑怯だぞ!」
彼が数歩後退すると、まったく別のところにいた1体がレイアの腕を掴んだ。
「きゃぁぁぁあ!何すんのよ!このエッチ!痴漢!変態!」
レイアは出せる限りの大声で相手を威嚇しようとした。だが、まったく効果なく。そのまま引きづられていかれそうになった。すると、その鎧の頭に大きなハンマーが振り下ろされた。頭が胴体にめり込んだ鎧は、レイアの腕を掴んだままその場に倒れた。
「お、お母さん・・・・・・ありがと。」
「まーかせなさい。」
傘を突き刺したのはノーマだった。自慢実に胸を張っている。
「しっかし・・・・よくそんな重そうなものを振り回せるわね。それに、そんなものどこで拾ったのよ。」
「ああ、これぇ?そこに落ちてた・・・・はっ!・・・ああぁっ!こ、腰がぁぁぁ。」
ノーマはハンマーごと前に倒れた。レイアが呆れてため息を一つついたとき、ノーマの後ろに別の鎧が迫った。
「あぶない!」
レイアが叫んだときは時既に遅く、ノーマに向かって腕が振り下ろされようとしていた。と、その腕が急に止まった。
「ご婦人を殴るなんていうのはいかんなぁ。」
鎧の腕を止めたのは、二枚目映画俳優のような顔立ちのりりしいエリート軍人・・・といった雰囲気の男だった。腕を掴んだままサーベルを抜き、敵をばっさりと一刀両断にした。
「アレックス!」
青年に襲い掛かろうとしていた敵の視線がアレックスと呼ばれた彼の方へ向けられた。青年の顔に笑みが浮かんだ。すばやく起き上がってよそ見をしている敵2体に切りつけた。
「隙ありぃ!」
2体が見事に真っ二つにされて地面に崩れ落ちた。反撃しようとしたが時既に遅し。残りの1体も同じように切り捨てられた。
「当然のことをしたまでです。民間人を守るのは軍人として当然の任務ですから。」
彼はサーベルをしまいつつ、答えた。青年の方は近くに転がっていた動かなくなった敵の様子を確認しに行っていた。
「ところでお名前は?」
「アリステア第1近衛中隊、アレックス・キングラム少佐です。」
レイアが尋ねると男は少し微笑みながら答えた。そのころ、ようやくもう一人の青年が戻ってきた。
「特に異常なし。急いで目的地に行きましょう。」
「そうだな、敵に襲われていたりしたら大変だからな。・・・・申し訳ありませんが、先を急ぎますので。すぐに避難場所にいったほうがいい。」
「はい、わかりました。ありがとうございました。」
ノーマが頭を下げてお礼を言う。
「ところで、町長のお宅というのはここから遠いのですか?」
2、3歩歩き出したアレックスが、ふと立ち止まってノーマに尋ねた。
ノーマは驚いた顔でアレックスの顔をまじまじと眺めた。
「・・・・・私の家が町長の家ですが・・・・・。」
2人の間に妙に間のぬけた雰囲気が漂う。
「・・・・・それでは、ノーマさんに・・・こちらがレイア様?」
アレックスはノーマから視線をレイアのほうへ向けた。
「ええ・・・・。」
ノーマが驚いた顔のままで一言だけ答えた。ノーマはアリステアからレイアの迎えが来る事は知っていた。だが、それは明後日の予定だった。
「お出迎えに参上しました。レイア様、これからアリステアに参りましょう。」
「えっ?・・・・ヘキルノのアリステア大使館に行くのは来週だったはずですが・・・・。」
レイアはまったく事態を飲み込めず、困惑してアレックスに尋ねる。
「・・・・・もしかして・・・まだご存じないのですか?」
アレックスの視線がノーマの方へ向けられる。ノーマは、ばつが悪そうに俯いた。
「何がですか?・・・話が見えないんですが・・・・何なの、お母さん?」
レイアが俯いているノーマを覗き込んだ。目が合うとノーマはすぐに視線を逸らした。
「何なのよ!お母さん!私に隠し事?・・・・・・・・・・・・・・・・まさか・・・・私に無断で許婚を決めたとかじゃないわよね?・・・・・・・・まあ、カッコ良くって、やさしくて、頭が良くて、お金も持ってて・・・とかだったら考えてもいいけどぉ・・・・。」
レイアが半分冗談を交えてノーマに尋ねる。それでも、ノーマは黙ったままだった。
「お母さん!・・・・ちゃんと説明してよ!」
レイアの顔色が変わり、ノーマの両肩をつかんで大きく揺さ振った。ノーマが大きく揺すられたが顔はやはり俯いたままだった。
「私から説明しましょう。・・・・いいですね?ノーマさん。」
ノーマの悲痛な表情に耐えられなくなったのか、アレックスが言った。すると、ノーマは唇を噛み締めながら顔を上げた。
「・・・いいえ・・・・・・・・・・・・いいえ、私から説明します。・・・・・・親としての義務ですから。」
ノーマはそう言うとレイアの正面へ向き直り、まっすぐレイアの目を見た。
「な、なーに・・・・改まっちゃって・・・やだなぁ・・・。」
レイアは苦笑いを浮かべながら言った。だが、難しい顔をしてじっとレイアを見つめているノーマの表情に、レイアの表情も固くなっていった。
「なに、お母さん。・・・・私は・・・・・・・・・何を言われても大丈夫だから。」
長い沈黙の後、ノーマがゆっくり口を開いた。
「あなたは・・・・・・・・・・・・・私たちの本当の娘ではないの。いえ、それだけではないわ。あなたは・・・・・・・・・・・・・アリステアの・・・・・アリステアの国王の娘、レイア・アリステアなのよ。」
ノーマはそれだけかろうじて口にすると、その場に泣き崩れた。
「・・・・・・・・私が・・・・・・・・・・・・・・・・な、なによ・・・・・・・・・・・何わけのわかんないこといってんのよ・・・・・・・・・。」
レイアは呆然と立ち尽くすしかなかった。
次回
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