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Office責任者ロング・インタビュー 「ユーザーが受け入れない製品なら失敗作だ」 [Thursday, January 8, 1998 山田 剛良=日経MAC] Benjamin Waldman氏,米Microsoft社General Manager,Macintosh Business Unit 98年のMACWORLD Expo/San Francisco最大の話題は「Microsoft Office 98 Macintosh Edition」(以下Office)の登場だろう。開発チーム全体の指揮を執り,Steve Jobs氏の基調講演にも招かれて新しいOfficeの機能を聴衆に披露したWaldman氏に新しいOfficeについて聞いた。 ●Officeの開発はどのように進んだのですか MicrosoftはOfficeの開発でこれまでとはまったく違うアプローチを取りました。まず,マック版専任の開発チームを組織しました。総勢130人のスタッフをマック版だけのために割きました。Apple外では最大のチームだと思います。 次にOfficeのどこに不満があるか,マックのユーザーに向けてWebを使ったアンケート調査を行いました。たった5日間の調査に6000件もの熱烈なコメントが寄せられました。つまりそれだけ多くのユーザーが「良いOffice」を望んでいると分かったわけです。 多くはOfficeをもっと「マックらしい」ソフトにしてほしいという要望でした。インストールやメンテナンスの簡便さや,クロスプラットフォームの互換性の確保を望む要望も多かった。90%のマック・ユーザーがWindowsユーザーとファイルを交換しており,50%のユーザーは毎日交換している事実が分かりました。 これらを検討した結果,我々は開発の目標を3つ設定しました。 1つめはマック・ユーザー向けに優れたマック製品を作ること。ユーザーが望む機能は絶対入れようと思いました。例えば,自動インストール機能の採用がそれにあたります。また,製品がマックらしいルック・アンド・フィールを備えるように気を使いました。Windows版との互換性も完ぺきです。 2つめは使いやすさです。すべての機能に見通しが利く製品を目指しました。Officeの全機能の3/4をエンドユーザーが毎日使えるように考えました。ユーザーの振る舞いを監視して,適切なアドバイスを与えるアシスタント機能や「自然言語技術」の採用がこれに当たります。 3つめの目標は,コミュニケーションとコラボレーションの機能をアプリの中に統合することでした。グループでファイルを共有して仕事をする場合に,便利な機能をつけ加えました。セルごとにデータの履歴を記録する「Excel 98」の機能や文書間のハイパーリンク機能などがそれです。 ●「自然言語技術」は日本語版でも有効なんですか? もちろんです。Officeは最初から5カ国語を念頭に置いて開発を進めましたから。日本語版にだけ存在するアシスタント機能もあります。シソーラス辞書や自動スペル・チェックも日本語が使えます。 「鉛筆と消しゴム」インタフェースを使った表作成は「Word 98」の売りの1つですが,これは元々日本語版向けに開発した機能です。作ってみたらアメリカ人にも便利だと思ったので,英語版に取り入れることにしたんです。 ●Officeのライバルは何ですか 最大のライバルは前のバージョンのOffice(Office 4.2)です。我々は新しいOfficeが前のより優れていると分かってもらう必要がある。 前バージョンのOfficeのバグやパフォーマンスを問題を解析する専任チームを組織して,製品をチューンしました。アプリの起動,書類のオープン,セーブ,印刷,終了どれを取っても前のバージョンより格段に速くなっています。 ●理論的にはPower Mac G3が世界で一番速いパソコンですから,マック用のOfficeが世界で一番速いことになりますか いえ,そうはなりません。というのは,MicrosoftはWindows環境で最高の,マック環境でも最高のアプリをそれぞれ作ろうと努力しているからです。Microsoftは,別々の環境のアプリを比べることはしていません。 ●Officeを快適に使うためにはどの程度のハードウエアが必要ですか アンケートではこれを適切に決めるために質問事項を設けました。以前のバージョンを出荷したときはユーザーの18%しか32MB以上のメモリーを持っていませんでしたが,現在はこれが64%まで増えています。プロセッサーの速度もハード・ディスクの容量も増えています。 16MBのメモリーがあれば,Officeは動きます。一応,120MHz以上のプロセッサーと32MBのメモリーを推奨システムと想定しています。これは英語版の話です。 ●マック向けのチームを独立させた理由は何ですか。なぜ,Microsoftはマック市場に再び注力しようと考えたのですか Microsoftは,ユーザーに受け入れられた製品が良い製品,受け入れられない製品は失敗作だと考えます。 キッカケは「Word 6」です。残念ながらあの製品では不満足なユーザーがたくさん出てしまった。97年の1月にチームを独立させたのは,これまでより良い仕事をやりたいと考えたからです。やはり毎日マックのことばかり考えていた方が,良いアイデアが出ますからね。成果は新製品の完成度で証明できると思います。 我々はずっとマック市場にコミットしてきましたし,これからもそうです。方針転換をしたことはありません。 ただ,97年8月の提携以来,Appleとの関係がさらに緊密になったことは確かです。私はSteve Jobs氏と数週間に1度のペースで直接会ってますし,夜中の3時にメールのやり取りをしたこともあります。彼の自宅の電話番号も知ってますよ。必要なら電話を掛けてよいと言われています。 ●日本語版はいつになるでしょうか? 米国から数カ月遅れになると思います。ローカライズをきちんとやる必要がありますので。米国版をそのまま売るわけには行かない。日本語版Officeは,日本のユーザーに受け入れられるようにベストの製品に仕上げたい。 ただ,Officeは内部的にunicode(欧文や漢字など,すべての文字を2バイトのコードで扱う体系)を使っています。英語版のOfficeは,日本語環境でそのまま利用可能です。日本語を含んだ文書を英語版のOfficeで開けますし,逆でもまったく問題はありません。また,我々はJLK(Japanese Language Kit=Mac OS英語版上で日本語環境を実現するソフト)環境でも,Officeをテストしています。 ●日本のマック・ユーザーに何かメッセージはありますか すべてのマック・ユーザーに対して同じメッセージがあります。Microsoftは今後も850万人のマックの市場へ強力にコミットすると約束します。Officeの出荷はその証明の1つです。 特に日本の市場はMicrosoftにとって米国の次に重要なマーケットです。開発スタッフは全員,Mac OSの英語システムのほかにJLKをインストールした環境を用意して,交互にテストしながら開発を進めているほどです。 実は,私は2年前から日本語の夜間学校に通っています。個人的にもそれくらい真剣に取り組んでいるんですよ。 (聞き手=サンフランシスコ特派,山田 剛良)
MS Office 98登場(98.1.7) MSの開発リーダーに聞く(97.12.18) Office 98を1月に発表へ(97.12.17)
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