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悪魔の在庫をいかに減らすか 直販は方法論の一部 [Wednesday, April 15, 1998] このような「悪魔の在庫」をいかに減らし,かつタイムリーに顧客に製品を供給していくか,その方法論が今のいわゆるDell方式に結実されている。そこには3つの要素が存在する。 第1は,ダイレクト・マーケティングである。メーカー自身が直接にお客と接し,注文を取り,販売し,返品も受け付け,代金を回収し,技術サポートも行い,修理もときにはやる。これによって,マーケットのニーズや,顧客の商品に対する反応が直接把握できる。 従来型のマーケティングでは,実際は卸売業者や商店主を相手にしているのに,ユーザーと話をしていると錯覚するケースが実に多い。まさに「靴の上から足を掻(か)く」間接マーケティングだ。それに対して,ダイレクト・マーケティングなら,確実にユーザー・ニーズを得られる。 また,卸売業者からの注文には流通在庫の影響が大きいから,市場動向とのずれ,特に時間的なずれが生じる。ダイレクト・マーケティングにはそれはない。瞬時に把握できる。リアルタイムなのである。 ダイレクト・マーケティングにとって,通信販売は必要条件でも十分条件でもない。もちろん電話・郵便・Webを使ったテレ・マーケティングは重要である。しかし,Dellですら大口の顧客にはセールスマンが出かけるのが普通である。前者をインバウンズ・セールス,後者をアウトバウンズ・セールスと呼ぶ。また,ダイレクト・マーケティングによる店舗販売もあり得る。メーカー直営のアウトレット・ストアがそれで,DellもTexas州Austin市郊外に持っている。 ダイレクト・マーケティングにはもう1つメリットがある。顧客から直接に代金を頂戴することだ。卸売業者におけるキャッシュ・フローの滞りがバイパスされる。流通在庫を保たないこととも相まって,キャッシュ・フローが楽になり,資本回転率が向上し,利益も上がる。 ダイレクト・マーケティングのもっとも重要な点は,最初に述べた「ユーザーと直に接する」ことである。卸売業者やPCストアの商店主を満足させて,一時しのぎの売り上げを伸ばしてもしかたない。メーカーはユーザーを満足させねば,勝負にならないのだ。
BTOは在庫ゼロのための一手段 欲しいものは今すぐ欲しい,これは私に限ったことではない。従来はユーザーのこのわがままを満足させるために「在庫」が機能してきた。逆に言えば従来方式では「在庫ゼロ」は不可能だ。そこで考えられたのが「最小限の部品在庫は持つが,製品在庫は保たず,作ったその場から顧客に出荷する」という発想である。そのためには,作る前に顧客を特定し,仕様を確定する必要がある。だからBTOなのだ。 ダイレクト・マーケティングの現場は実にエキサイティングだ。総合的にフローの概要を述べると,次のようになる。 ワン・フロアすべて,注文取りの電話オペレーター。チア・リーダーのようなフロア・マネージャーが檄(げき)を飛ばす。壁の電光掲示板には,その日の成約台数とともに,電話のビジー(ウェイティング)ラインの本数が,けばけばしく点滅し,オペレーターに応対を催促する。彼らと彼女らの取った注文は,クレジット・ラインの照合の後,オンラインで出荷工場に送られ,すぐにその仕様による組み立てが開始される。 Dellの工場はジャンボ・ジェット機が入ろうかというほどのスケールだ。工場に向かって左側のシャッターが開き,そこにばかでかいトレーラーが部品を満載して到着。部品が降ろされるのと並行して,荷台部分と運転席が切り離される。 ベルト・コンベアー上で,さきほどの仕様書に従い,到着した部品は組み立てられていく。ネジ類を除いて,どんな小さな部品にも(ケーブル1本にも)バーコードが振られており,組み立ての過程で仕様書とコンピューターで照合されるから,間違いは少ない。 長いベルト・コンベアーの中ほどで完成し,第1次の動作チェック。それをパスしたものは24〜48時間のバーン・イン(火入れ=長時間のランニング・テスト,エージング)に入る。 火入れが済んだら,キーボードやマニュアル,おまけのCDなどを梱包し,宅配便のあて先シールを貼って,工場の右側に到着していたトレーラーの荷台に積まれる。満杯になると,先に切り離された運転席がこっちに連結され,飛行場方面へ走り去っていく。部品到着から,最も早い物は1日ちょっと,ベルト・コンベアーを一周しただけで,商品として出ていくのだ。 実に壮観である。見方によっては,工場と言うより流通配送センターに近い。だから「Fulfillment Center(計画達成センター)」という呼称も一般的になってきた。 記事目次/前のページ/次のページ この記事は、日経MAC98年5月号(98年4月18日発行)掲載記事の抄録です。 |
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