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製品とマーケティングに自信が必要
会社全体をJITに最適化

[Wednesday, April 15, 1998]

Dell方式では,受注から商品発送まで,あるいはマーケティング活動そのものまでをJust In Timeで行う。これが第3のポイントである。つまり会社全体をJIT生産に最適化し,従来型の流通経路を切り捨てた。ちなみにDell社でこれを推進した元副社長から,これを「VJIT」と命名したことを聞いた。「V」は「Very」の意味だ。

つまり,Dell方式とは「良い製品をもっと効率的に売る会社を運営する」手段であり,よく言われるような「流通を効率化する」手段ではない。

製品とマーケティング力に自信があれば,このビジネスは最強のものと言えるだろう。先の数字からみればその差は明らかだが,投下資本に対するリターンでみても,間接マーケティング中心のCompaqが28%であるのに対し,Dellは約その2.5倍の73%を記録している注)

また,このビジネス・モデルは最終利益だけではなく,いろいろと面白いマーケティング手法をフレキシブルに採り入れられるメリットを併せ持つ。

極端な例だが,750MHzのG4が3456個だけ手に入ったとしよう。今のPower MacのようにCPUだけを別ボードに設計してあれば,CPUボードとフロント・パネルに貼る750MHzのシールだけを3456枚作れば,G4/750MHzのPower Macが3456台作れる。そして,電話セールスのフロア・マネージャに3456台だけ注文を取れと指示すれば,G4/750MHz のPower Macをすぐに商品化できる。

もちろんリスクはある。

売れない物を作っても,押し込む先の卸売業者はない。すぐ壊れる製品を売っては,お客からの防波堤になってくれる商店はない。すべて自社の責任に,直接跳ね返ってくる。

直販と間接販売を並行させた場合の危険性もある。マージンや販売価格の設定,値引き販売といったトラブルは容易に想像できるだろうが,私の見た例はそれではなかった。在庫に対する認識のずれから生じたと思われるトラブルだった。

例えば「値下げ」のタイミングだ。「VJIT」社自体は,マーケット(消費者ニーズ,競合各社,部品コスト)動向だけを考慮して価格を定め,それで売る。ところがVJIT社が自社販売分をそれで価格改定(99%は引き下げだ)すると,販売店の在庫の仕入れ値段より安くなってしまうことがあり,在庫分の新仕入れ値段との差額をどうするのかといった問題が生じる。

もっと深刻な問題は「新製品」の発表タイミングである。

VJIT社ではすぐにでも売れるのに,販売店の在庫が足かせになって発売できないとか,旧製品の在庫を引き取るといった問題に発展しかねない。リアルタイム・マーケティングが難しくなる。

Apple StoreはDell方式とは大きく違う
Jobs氏の狙いはDellのコピーじゃない

以上見てきたように「Dell方式」を通販と捕らえることは「木を見て森を見ず」になる。一方,Webから知り得ることで判断するのは拙速の感をまぬがれないが,Apple Storeは「通販」あるいはメーカー直販に留まっているように見える(次ページの別掲記事参照)。

ではApple Storeの狙いは何なのか。

一般のお店でも,ずいぶん前からWebによる通販を始めているし,メモリーやハード・ディスク程度の「BTO」はどこでもやってることだ。Apple Storeはこれとどこが違うのだろうか?

しかし私には,ここにもAppleの「Think different.」が働いていると思いたい。AppleはDellのまねなんかしてるんじゃあない,と。その真の狙いは,凡人の私には測り知れないが,Appleの暫定CEO,Steve Jobs氏はこれから独自の全く新しい「Insanely Great(気が狂うほど素晴らしい)」なビジネス・モデルの展開をもくろんでいるのだろう。

アップルは,Apple Storeの日本での展開を一時は難色を示し,この2月のMACWORLD Expo/Tokyoにおいて,改めて,時間をかけて始めると,発表した。安易に米Apple本社に追従しているのではない,ダイレクト・マーケティングの真髄を理解した慎重さの現れなのか...。

これらがAppleへの想いの「あばたもえくぼ」でないことを期待したい。

(松本 吉彦)


注)1996年10月27日締めの9カ月間のデータ。


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この記事は、日経MAC98年5月号(98年4月18日発行)掲載記事の抄録です。

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This page was last updated on Wed, Apr 15, 1998 at 10:55:10 PM.
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