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Apple Storeの真の狙いは流通改革? 5月には小売店にも直販を導入 [Wednesday, April 15, 1998] 本文で松本氏が述べているように,現行のApple Storeは,Dell方式の重要な要素のいくつかを欠いている。 まず,AppleのBTO工場はCalifornia州Sacramento市にあり,JIT生産方式や出荷に有利な立地条件ではない。また日本でApple Storeを展開する場合にはシンガポール工場を使う考えだというが,シンガポールは日本向けの流通拠点としては遠すぎる。 現行の「Power Macitosh G3」は専用部品がまだまだ多い。マック互換機メーカーがほぼ消滅した今,作った部品を他の会社に売るルートはないから,部品メーカー側はパイを広げるメリットがない。 したがっておそらく,AppleのBTO工場は本格的なJIT生産ではなく,多くの部品在庫をAppleが抱えていると思われる。JIT納入はせいぜいメモリーやハード・ディスク程度だろう。JIT生産は部品メーカーが部品在庫を引き受けてくれて初めて成り立つ仕組みだからである。 さらにAppleは直販と従来型流通(間接販売)を併存させている。これでは流通段階の製品在庫もゼロにできない。キャッシュ・フロー上のメリットも少ない。要するにDell方式の理念「あらゆる在庫を減らす」は,現行Apple Storeの枠内では十分には実現できない。 となるとApple Storeのメリットは,ダイレクト・マーケティングでユーザー・ニーズを的確につかめる,という点だけになる。だが,Dellと違って得たニーズを市場にリアルタイムで反映する仕組み「JIT生産・顧客への直接出荷」が未整備なので,きちんと効果を発揮するか疑問が残る。
小売店にもApple Storeを導入 Worldwide Sales担当Mitch Mandich上級副社長によるとAppleは98年5月から小売店向けにApple Storeを導入するという(98年2月に行われたインタビュー記事「Mandich副社長に聞く」を参照)。Apple StoreのWebサイトに店頭からアクセスし,店員のアドバイスを聞きながら,欲しい商品を直接Appleにオーダーする。販売店には売れた台数に応じて,Appleからマージンが支払われる。 これがうまく機能すれば,個人向け販売のほとんどについて卸売業者をバイパスできるから流通在庫を劇的に減らせる。また,リアルタイム・マーケティングの足かせになる流通のタイム・ラグがなくなるので,メリットを生かせる芽が出てくる。 企業への大量販売を考えると,自前のセールス・スタッフを持たないAppleは,有力な卸売業者や代理店の持つディーラー網に頼らざるを得ない。したがって,直販への一本化は難しい。また,マックの独自部品の多さゆえに,本格的なJIT生産は事実上不可能である。これが現実だ。 もちろん,そのような外的要因はJobs氏だって百も承知のはず。それでもApple Storeを立ち上げたのは,Dellとは異なる狙いがあるからだ,と考えるべきだろう。 Jobs氏の戦略は,間接マーケティングとダイレクト・マーケティングの「いいとこ取り」を狙いつつ,現行の流通の問題点を改善する現実路線に見える。現時点で判断する限り,DellというよりはCompaqの路線に近い注)。 (山田 剛良=日経MAC)
注)米Apple Computer社は98年3月11日,元CompaqのTimothy D. Cook氏をWorldwide Operations担当上級副社長として招き入れたと発表した。Cook氏はCompaqで購買,在庫管理を主に担当していた。この引き抜き人事もAppleが,Compaq型のビジネス・モデルを目指していることの傍証になるだろう。 記事目次/前のページ/次のページ この記事は、日経MAC98年5月号(98年4月18日発行)掲載記事の抄録です。 |
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